2019年9月13-14日 金・土曜日

1泊2日小屋泊登山

朝日岳

大朝日岳 1,870 m

 2時起床、2時40分出発。現地には7時半到着。金曜日に休みをとって山小屋を利用したので、3連休の混雑を避けることができた。初日は山頂にガスが出ていたが、山小屋管理人の言葉どおりにブロッケン現象を見ることができた。翌朝には見事な日の出に心を洗われ、安全な距離をはさんでクマの姿を目撃した。その後、大朝日岳に再登頂してずらりと並ぶ東北の名峰と晴れは渡る朝日連峰の山並みを眺めながら至福の時間を過ごした。稜線からの眺めも素晴らしく、樹林帯ではヒメコマツやブナ、ダケカンバなどの巨木に、山深い朝日岳の大自然を感じた。最期にオオクワガタを拾うという驚きのおまけまでついた。

 帰りはオオクワガタに早く餌を与えたい一心でほとんど休みなく高速を飛ばし、19時半過ぎに帰宅した。オオクワガタが生きていることを確認して飼育環境を整え終えた時にはどっと疲労を感じたが、すべて含めてこれ以上ないほど満足度の高い山行になった。

登山コースデータ
単純標高差 : 1,120 m
累積標高差 : 1,755 m
  1日目 : + 1,375 m / - 265 m
  2日目 : + 380 m / - 1,490 m
コース距離 : 19.3 km
  1日目 :  8.4 km
  2日目 :  10.9 km
標準コースタイム : 11 時間 40 分
  1日目 :  6 時間 15 分
  2日目 :  5 時間 25 分
歩行データ
総歩行時間 : 13 時間 25 分
  1日目 : 6 時間 25 分
  2日目 : 7 時間

 コースタイム 1日目

古寺鉱泉P 7:55 ⇒ ハナヌキ峰分岐 9:45 ⇒ 11:05 古寺山 11:20 ⇒ (小ピークで10分休憩) ⇒ 13:30 銀玉水 13:40 ⇒ 14:25 大朝日小屋 14:50 ⇒ 15:05 大朝日岳 16:10 ⇒ 大朝日小屋 16:25[宿泊]

 コースタイム 2日目

大朝日小屋 6:15 ⇒ 6:30 大朝日岳 7:00 ⇒ 7:15 大朝日小屋 7:25 ⇒ 8:05 銀玉水 8:15 ⇒ (途中 5分休憩) ⇒ 9:35 小朝日岳 9:45 ⇒ 11:15 鳥原山展望台 11:20 ⇒ 11:50 鳥原小屋 12:00 ⇒ (オオクワガタ捕獲 5分) ⇒ 畑場峰 13:25 ⇒ 古寺鉱泉P 14:40

朝日岳 1日目

7:30 古寺鉱泉駐車場

寒河江SAでガソリンを入れるつもりが、開店(7時)まで30分もあると知り、次の西川ICで一旦高速を降りて給油。時間をロスしたが、林道終点にある古寺鉱泉の駐車場に予定どおりの7時半に到着した。駐車場に隣接した案内センターが建設中だった。

駐車場は何区画かに分かれていて、とても広い。

7:55 駐車場を出発。林道終点から沢沿いの桟道を進む。

5分ほどで古寺鉱泉「朝陽館」に到着。登山道はひなびた旅館の裏にある。

登山道に入るとジグザクの上りがしばらく続く。

登るほどにヒメコマツやブナの大木が次々と現れて、すぐに深山の雰囲気となった。

ヒメコマツとブナが合わさった「合体の樹」。

ゆるやかに高度を上げながらブナの樹林帯を歩く。ブヨなどの虫を警戒していたが、気にならなかった。

最初はひたすら眺めのない樹林帯が続く。

9:35 一服清水を通過。水は冷たかった。

樹間に古寺山らしき小ピークが見えた。

9:45 ハナヌキ峰分岐を通過。ここで日暮沢小屋からの道と合流する。

分岐からは傾斜が増した。

不自然な樹形を描くブナの大木。よほど根がしっかりしていなければ、これは支えられない。

踊るように曲がりくねったブナの大木が、厳しい自然環境を思わせる。

深く削られた登山道の壁面を覆う緑の苔。10:30 三沢清水(さんざわしみず)を通過。

ひらけた尾根に出ると、前方に古寺山が見えてきた。

ひらけた尾根に出ると、前方に古寺山が見えてきた。

11:05 古寺山に到着。お腹も減ってきたので休憩をとった。南側には小朝日岳、右奥に見えるはずの朝日岳は雲の中だった。

西側の中岳や西朝日岳にも雲がかかっており、竜門山(右)だけは見えていた。

古寺山にいたキアゲハ。キアゲハは平地から標高3,000mの高山帯まで広く分布する。

11:20 登山再開。小朝日岳方面へ向かう。昼近くになり、小屋泊まりと思われる登山者とすれ違うようになってきた。

たくさん群生していたトリカブト。

途中、小さな池のほとりをギンヤンマが行き来していた。

何度も池の周りをパトロールするので、ホバリングするところを待ち構えて撮った。オニヤンマ並みの大きさで、アカトンボを追い散らす姿は迫力満点だった。

しばらく下って上り返す。よいペースで来たが、少し妻に疲れが見え始めた。

小さなアップダウンを越える。古寺山から見た感じよりも、小朝日岳までの鞍部は距離があった。

徐々に背後の古寺山が遠くなってきた。迂回路分岐まで意外と上りがキツかった。

11:55 小朝日岳の迂回路分岐に到着。小朝日岳は明日登るので、迂回路を進んだ。

再び樹林帯に入る。

迂回路は小朝日岳の北西側につけられている。竜門山にもガスがかかってきたので、大朝日岳の展望は明日に期待しようと考えていた。

迂回路終了。明日はここから小朝日岳へ上る。

分岐からはダケカンバなどの樹林帯を最低鞍部の熊越まで下る。

樹林帯を抜けると背後に迂回した小朝日岳。露岩がのぞく小朝日岳の南面は、傾斜がきつくて荒々しく見えた。

目指す大朝日岳は雲の中だが、一瞬前方に西朝日岳が見えた。

12:55 小ピークで休憩した。日帰りらしき登山者ともすれ違ったが、健脚な方を見ると自分も頑張ろうと思えてくる。

白いオヤマリンドウが咲いていた。紫のオヤマリンドウは沢山群生していたが、白いものは珍しい。

前方はますますガスが深くなって、どのあたりが大朝日岳かまったく分からなかった。

解放感のある稜線歩きが続く。北アルプスの百名山と違い、人が少ないので気持ちよく歩けた。

時折見え隠れする前方の山が大朝日岳かと思っていたが、その左の鞍部に一瞬山小屋が見えたので、左奥の雲に隠れた山が大朝日岳だと分かった。結局下からはまったく見えなかった。

足腰が疲れてきたが、あと1時間も上れば小屋に着くはずだと思いながらせっせと上る。

13:30 銀玉水に到着。水をしっかり確保してから先へ進んだ。

銀玉水を過ぎると植生保護のための石段となった。手ごろな石がたくさん転がっていたので、記念に持ち帰る石を探しながら歩いた。

石を探している時、パッと目についたキク科のミヤマコウゾリナ。

霧の中に小ピークが見えてきた。山小屋はあの向こうだろうと思いながら歩いた。

数は少ないがハクサンフウロも咲いていた。

小ピークを越える人影が見えた。晴れていたらここも素晴らしい展望だろうと思いながら進む。

小ピークには朝日嶽神社奥宮の小さな社があった。

奥宮から大朝日小屋は徒歩5分ほどの距離だが、最期までガスで見えなかった。

思わぬところでカエルに遭遇。谷川岳の稜線でも見たヤマアカガエルだろうか。

14:25 大朝日小屋

14:25 大朝日小屋に到着。協力金1,500円/1人を払って、寝床となる2階で場所取りをした。先客は10人ほどで十分なスペースが残されていたので一安心した。

一階の様子。

小屋の周りに咲いていたマツムシソウ。トリカブトやオヤマリンドウも咲いていた。

14:50 とりあえずアタックザックで山頂へ。小屋番の方に、ブロッケン現象が見えるかもよ、と声をかけられた。

15:05 ついに大朝日岳に到着。空は明るいのだが、やはり山頂は真っ白だった。

先客2名もいなくなり、誰もいない山頂でのんびり天候の回復を待つことにした。

時折ガスが切れて周囲の山が一瞬見えるが、すぐ雲の中に消えてしまう。

太陽を背に立つと、ブロッケン現象が本当に見えた。幽かに何度か見えて、あきらめずに待っていたら、最後にくっきりと見えた。東の谷間に深い霧が出て、反対側の太陽が雲から出たときに条件が整うようだった。

16:10 下山開始。小屋番の方にブロッケン現象が見えたことを話すと、運がよかったねぇと喜んでくれた。

壁際にステンレス台があって、バーナーを使えるので便利だった。モンベルのレトルトで食事を済ませて、早々に横になった。皆、就寝が早くて18時にはほとんどの人が寝ていた。

朝日岳 2日目

4:05 起床 大朝日小屋

4時過ぎに起床。妻はあまり寝られなかったらしいが、私はぐっすりと寝ることができた。

日の出時刻に合わせて小屋前の広い場所に陣取った。

赤橙の朝焼けが刻々と色を変えていた。

5:15 東の雲海から太陽が昇ってきた。

モルゲンロートに染まる大朝日岳。

世界が美しくなるこの時間帯は、何度経験してもよいものだ。

隣の中岳と西朝日岳も淡く色づいていた。

誰かが「クマだ!」と声を上げたので、視線の先に目を凝らすと、黒いものが金玉水の方へゆっくり動いていた。

クマは登山道を横切ってハイマツの中に見えなくなった。安全なところから野生のクマを見てみたいと思っていたが、まさか本当に見られるとは。クマの出現も今回の山行を特別なものにしてくれた。

小屋に戻って簡単な食事とパッキングを済ませて、6:20 空身で山頂へ向かった。

6:30 誰もいない大朝日岳の山頂に到着。

6:30 大朝日岳山頂

前日はガスの中だったが、この日の山頂は360度の大展望が広がっていた。

西の眼下に三角の影大朝日がくっきり見えていた。

御影石の山頂方位盤にカメラを載せてセルフ撮影。

北側の眺め。手前には昨日歩いて来た稜線と大朝日小屋が手見える。小屋の左上には中岳と以東岳が重なり、右奥には月山も見えていた。

月山の左奥には鳥海山の山頂も幽かに見えていた。まっすぐ横に透明な霧のような膜がかかっていて、不思議な山の見え方だった。

北東側の小朝日岳。左奥には葉山、右奥には船形山が薄っすら見えていた。

逆光の東側。手前は朝日鉱泉につながる中ツル尾根で、奥には蔵王山が見える。

蔵王山のアップ。

南南東側。手前に御影森山、奥には吾妻山と磐梯山が見えていた。

吾妻山と磐梯山。

南南西側。手前から平岩山、大王山、祝瓶山(いわいがめやま)と稜線が延び、その奥には飯豊連峰の山塊。

飯豊連峰のアップ。左側が飯豊山で、真ん中あたりに大日岳。手前の尖峰が祝瓶山。

東側が逆光でうまく写せず、何度も撮り直した。

30分ほど山頂にいたが、ずっと貸切状態が続いて、心おきなく大展望を満喫できた。

7:00 下山開始。山を下りた後は5時間の運転が待っているので、早めに移動を開始した。

時間とともに陰影がくっきりしてきて、下山時には西朝日岳の左奥、鷲ヶ巣山(わしがすやま)と前ノ岳の右側に海岸線が見えた。

中岳、西朝日岳、以東岳と続く朝日連峰の主稜線を眺めながら、ゆっくり下る。

あまりの大展望に名残惜しい気持ちもあったが、良い日に登れたことへの感謝の念が自然と湧いてきた。

7:25 下山開始 大朝日小屋を出発

出発前に小屋番の方と話しをしたが、彼はマタギでもあり、中岳との鞍部はクマの通り道になっていると教えてくれた。山頂の大展望について話すと、ブロッケンに大展望と欲張りな登山になったねぇ、と我がことのように喜んでくれた。7:25 山小屋を出発。

前日感じていた通り、山小屋から朝日嶽神社奥宮のある小ピークまで、解放感抜群の稜線歩きが楽しめた。

奥宮の小ピーク、小朝日岳、鳥原山とこれから向かう山を一望しながら進む。

10分ほどで小ピークに到着。

北西側の中岳と以東岳。

振り返ってみた大朝日岳。

以東岳のアップ。途中の岩場に真新しいオコジョの糞があったので、近くでしばらく様子を見たが、現れる気配はなかった。

どの方角も奥行きのある素晴らしい展望なので、同じような写真を何枚も撮ってしまった。

小ピークを過ぎて小朝日岳が正面に見えてきた。

ところどころに群生していたウメバチソウ。

石畳を下る。昨日同様、拾って帰る石を探しながら歩いたが、最終的に拾ったものから2つ残した。

群生していたキク科のミヤマアキノキリンソウ。

その傍らにはママハハコも群生していた。

8:05 銀玉水で水を補充して長い下山路に備えた。

群生していたオヤマリンドウ。

どちらを向いても眺めがよいゆるやかな稜線をのんびり歩く。

背後の大朝日岳が徐々に遠くなっていく。

日帰りと思われる登山者たちがもう登ってきて、その健脚ぶりに再び感心されられた。

樹林帯に入り、小朝日岳の最低鞍部・熊越へ向かう。

途中、年季の入った出立ちのベテラン登山者に「竜門小屋からきたのか?」と早口のなまり言葉で唐突に訊かれた。妻が質問を聞き返して「大朝日小屋から」と応えると、「随分ゆっくりだな」と独り言のようにつぶやいて行ってしまった。きっと悪気はないのだろうが、何だか粗野な男だなぁと戸惑いを覚えた。同じ山男でもこうも違うかと、小屋番の方の人当たりの良さが思い出されて、良くも悪くも印象に残った。

熊越を過ぎて、いよいよ小朝日岳の上りに入る。

9:00 急坂に取りつくと、すぐに迂回路との分岐に出た。今回はそのまま小朝日岳へ向かう。

岩ゴロの急登をせっせと上る。風が涼しくて助かった。

上るほどに展望が開けてきた。

中岳から以東岳へ続く朝日連峰の主稜線がよく見えた。

20分ほどで開けた道に出たが、小朝日岳はまだ先だった。

妻がシャリバテ気味だと言うので、小休止して軽食を食べから先へ進んだ。

9:35 小朝日岳

小朝日岳の山頂に到着。

西側には大朝日岳から中岳、竜門山、以東岳と続く主稜線が一望できる。

北側には古寺山の稜線とその向こうに月山がよく見えていた。

9:45 小朝日岳を出発。

急勾配の滑りやすいクサリ場を下る。

東側にはこれから向かう鳥原山へと続く稜線が延びており、その遥か遠くには蔵王山が見えていた。

アマツバメが小朝日岳の上空をビュンビュン飛び交っていた。

鳥原山方面からの登山者と数回すれ違ったくらいで、静かな山歩きが続いた。

再びクサリ場が出てきた。足元が滑りやすいので慎重に下る。

鳥原山へ向かう灌木帯は下草が鬱蒼としていたが、登山道はしっかり見えていた。

登山道脇にアザミがたくさん咲いていて、チクチクと痛かった。

ゆるやかなアップダウンの間に、時々滑りそうな急坂が出てくる。

シオガマの仲間では一番大きいオニシオガマ。

群生していたミヤマダイモンジソウ。

徐々に鳥原山が近づいて来た。藪が深くてクマがいそうな場所が多々あるので、熊鈴を鳴らしながら歩いた。

少し開けた鞍部に出て、ここから上り返す。

途中で綺麗なコケが目についたので、持ち帰るために小さな塊を土から剥がしてジップロックに入れた。

まだ着かないなぁと思いつつ、整備された木段をゆっくり上った。

鳥原山展望台に到着。沢山のトンボが上空を飛び回っていた。

11:15 鳥原山展望台

展望台は西側の眺めがよく、大朝日岳と小朝日岳がよく見えた。

5分ほど休んでから先へ進んだ。

少し先に鳥原山の山頂らしき場所があったが、三角点と石碑があるだけで展望はなかった。

11:40 鳥原分岐に着くと、ギンヤンマなどのトンボが無数に飛び交う小さな湿地に出た。迷った末に、トイレを利用するため鳥原小屋へ寄ることにした。

小屋までは木道が設置されていた。道標には鳥原小屋まで365歩と手書きされていたが、その歩数ではいけない距離だった。

まだ着かないのかと思い始めた頃に鳥居が出てきて、すぐ先に鳥原小屋があった。

11:50 鳥原小屋

小屋で登山者が1名休んでいた。トイレは離れにあり、とても綺麗な水洗だった。

小屋の隣に朝日嶽神社があった。ここで毎年6月第3日曜日に朝日連峰山開きの神事が執り行われる。

鳥原小屋からは、東側の眺めがよかった。

12:00 ひと休みして鳥原小屋を出発。

湿った粘土質の下り。何度か滑ったが転ぶことはなかった。

豪雪の影響で曲がったブナの木が散見された。鳥原小屋からはまったく人に会わなかった。

なんと登山道でオオクワガタを拾った。小ぶりだが初めて野生のオオクワガタを目にしたので、これは本当に嬉しかった。

鳥原分岐からの道は鬱蒼とした自然林が続いて、クマが現れそうな雰囲気に満ちていた。

13:25 畑場峰を通過。

先週、棒ノ嶺で見つけたものと同じサイズのカエルを見つけた。これもガマガエルかな。

ブナ林にヒメコマツが混じり始めると、傾斜がきつくなってきた。

沢の音が近づいてくるとますます傾斜はきつくなった。

かなり疲労を感じ始めていたので、古寺鉱泉の建物が見えたときは嬉しかった。

14:35 朝陽館を通過。

14:40 古寺鉱泉の駐車場に到着。3連休だけあって車がかなり増えていた。身支度を整えて即出発。救急セットの網袋にオオクワガタとクッション用の枯れ草を入れていたが、自宅まで元気でいてくれるか気が気じゃなかった。

19:35 帰宅 オオクワガタの世話

高速をほぼ休みなく飛ばして帰宅。すぐに飼育ケースを用意してオオクワガタに餌を与えた。

元気にバナナを食べていたので安堵した。今回は山のギフトをたくさんもらって、記憶に残る大満足の山行になった。