2017年8月2日 水曜日

阿蘇山

高岳 1,592 m

 3時40分起床、4時過ぎに大観峰から移動開始。仙酔峡道路は阿蘇青年の家との分岐に簡易ゲートが設置されており(車は通れる)、入っていいものかどうか迷った末に先へ進み、結局その先の通行止ゲート前の空き地に駐車した。早朝から快晴の登山日和で、心地よい風も吹いていたので快適に登ることができた。広大な阿蘇のカルデラと市街地を一望しながらの尾根歩きは開放感抜群で、山頂稜線に出てからの360度の展望もこの上なく素晴らしかった。貸切状態での山頂滞在を満喫したが、それと同時に登山規制やアプローチの道路規制などで、ほとんど登る人がいない状態であることが残念に思えた。風が強くなってきた昼過ぎに下山開始。仙酔峡から先は道路工事中の現場を通ることになるので多少心配していたが、作業員の姿はなく、重機に乗った人もただ座って待っている状態だったので通りやすかった。

 下山後は阿蘇の温泉につかって、天気を確認。台風5号の影響で明日から天気が崩れると分かったので、くじゅう連山と祖母山登山は諦めて、九州を出て宮島へ向かうことにした。

登山コースデータ
単純標高差 : 912 m
累積標高差 : 1,195 m
コース距離 : 12.8 km
標準コースタイム : 6 時間 50 分
歩行データ
総歩行時間 : 7 時間 55 分
総行動時間 : 9 時間 35 分

 コースタイム

ゲート前空き地P 5:30 ⇒ 仙酔峡登山口 6:25 ⇒ 高岳分岐 8:50 ⇒ 9:00 高岳 9:20 ⇒ 9:40 中岳 9:45 ⇒ 10:05 高岳 10:55 ⇒ 11:25 高岳東峰 11:50 ⇒ 高岳分岐 12:10 ⇒ 仙酔峡登山口 14:20 ⇒ ゲート前空き地P

 

車はゲート前の広い空き地に駐車。ヤマレコ情報から登れるものと思ってきたが、少々不安を覚えた。

高岳の登山規制はないが、登山口までの道路が工事中。全面通行止なので、さすがに通るのは気が引けた。

5:30 登山開始。高岳(左)と楢尾岳(右)を仰ぎ見ながら仙酔峡道路を進む。

朝焼けに染まる楢尾岳。右には仏舎利塔が見える。

重機の横を通る。この時間は誰もいないが、復路は工事現場の方に声をかけて通らせてもらう必要がある。

南東に見えた根子岳のシルエット。真ん中の一番高いところが天狗岩だが、去年の熊本地震で一部崩落したらしい。

仙酔峡道路は大きなカーブをえがいて延びている。30分近く歩くと登ってきた道を阿蘇山の麓に俯瞰できた。

途中、道路脇に工事に使うと思われるコンクリートブロックなどが積んであった。

土砂崩れで道路が土に埋まった場所を通る。真ん中にしっかりした踏み跡ができていた。

半壊した道路を通る。ここが先ほど通った土砂崩れの上にあたる。人が通るには問題ないが、車は通れない。

6:10 下から見えた仏舎利塔に到着。場違いで異質な印象を受けたが、日本妙法寺の藤井日達聖人が平和祈願のために、1967年(昭和42)に建立したものらしい。

隣には日本妙法寺の建物が並んでいた。

放置された車。道路崩落で帰れなくなったのだろう。ナンバーが外されていたのは税金の支払いを止めるためかな。

6:20 仙酔峡(905m)に到着。ロープウェーは2010年から営業休止。災害のせいではなく、財政難のためらしい。

200台停められる大駐車場は当然からっぽ。

トイレものぞいてみたが、荒廃して汚れていた。

6:25 仙酔尾根ルート登山口から登山道へ。まずは花酔い橋を渡る。

階段を上っていく。

やぶ漕ぎに近いところもあった。

6:40 しばらく上ると鷲見平に出た。鷲ヶ峰で命を落とした人々の慰霊碑が立てられている。

右のなだらかな山が高岳で、左に延びる高岳北尾根の尖峰が虎ヶ峰(左)と鷲ヶ峰(右)で、その間の尖った峰がジャンダルム。

背丈ほどもあった下草は、しばらく上ると短くなった。

コース上には日差しを遮るものはないが、風が吹いていたので暑さはそれほど感じなかった。

仙酔尾根はほぼ一直線に高岳山頂に登っている。急登が続く尾根だが、溶岩流の表層にしっかり埋まっている火山礫が確実な足場になる。最初はコンクリートを流し込んで岩ゴロを固めたのかと思った。

早朝から雲ひとつない快晴。間違いなく素晴らしい山行になるとの予感にテンションが上がった。

仙酔峡から随分上ってきた。樹木がないので足元から左右の谷底が広々と見渡せる。

背後の雲海に浮かぶのはくじゅう連山。

西側の右手には休止中のロープウェイと楢尾岳。

ひたすら岩ガレの急登が続くのだが、眺めがよいのであまり疲れを感じなかった。

7:25 ザックを下ろして、しばし周囲の大展望を楽しむ。

足元には上ってきた仙酔尾根が一望できる。

仙酔尾根の東側、右手は赤ガレ谷で、足場の悪い岩ガレが深々と落ち込んでいるので尾根を外さないように進む。

ルートの3分の2くらいまで上ると、さらに傾斜が増した。

足元の岩はしっかりしていて、あまり落石の心配はなかった。

西側の楢尾岳とその奥には阿蘇カルデラの外輪山。楢尾岳の左には杵島岳も見えてきた。

阿蘇山は中央火口丘群とそれを取り囲む南北25km、東西18kmに及ぶ外輪山から成るが、阿蘇市を城壁のように覆う北外輪山を眺めると、阿蘇カルデラの途方もない広大さを視覚的に理解できるようになる。

垂直の大きな岩壁をトラバースして越えて行く。

徐々に頂上稜線が近づいてきた。

西の楢尾岳の上に、杵島岳だけではなく、往生岳も見えるようになってきた。

8:45 頂上稜線に出た。

雲上散歩のような平坦で眺めのよい稜線歩きを楽しみながら、まずは高岳へ向かう。

5分ほど歩いてゆるいピークを1つ越えると高岳の鞍部にくる。高岳まではあとひと上り。

山頂手前の最後の上り。

9:00 阿蘇山最高峰・高岳(1,592m)に到着。

誰もいない高岳山頂は広々として、まさに360度の大展望。高岳の山頂もトンボが多く、アサギマダラやアオスジアゲハ、キアゲハなどが飛び交っていた。

西側には中岳と火口群。中岳の上には烏帽子岳(左)と杵島岳(右)、その奥には外輪山も見える。

北西側には楢尾山とロープウェイ火口東駅が見える。左上には杵島岳と往生岳。外輪山は雲にほとんど隠れてしまった。

北東側には高岳東峰と高岳火口跡の大鍋と呼ばれる窪地が広がっている。左上の雲海に浮かぶのはくじゅう連山。

南東側には広々とした大鍋の底。左上は祖母山が見える。

祖母山のアップ。大鍋の左側に月見小屋が見える。

南側には向坂山や国見岳など九州の山波。その右手前には阿蘇の外輪山。

高岳山頂の西端から中岳火口壁を眺める。

烏帽子岳と杵島岳の間に、中岳の奥にある第一火口付近から上がる噴煙が見える。

9:20 しばし眺めを楽しんでから、嫁のザックをデポして中岳へ向かった。

しばらく下って月見小屋分岐を通過。

中岳との鞍部に下って行くと、中岳火口壁が徐々に大きさを増す。

ゆるやかな小ピークをいくつか越えて、中岳へ向かう。

見た目ほどには距離がなく、周りを見渡しながら歩いて行くと、ほどなく中岳山頂が近づいてきた。

9:40 中岳(1,506m)に到着。20mほど手前からは登山規制で立入禁止になっていたが、風向きを確かめながら、まずは私独りで山頂へ。山頂も北東の風が強く吹いており、問題ないと判断して嫁も中岳山頂へ呼んだ。

中岳山頂から火口群を俯瞰する。噴煙を上げているのは第1火口。噴煙の右の小ピークが立入禁止となっている火口東展望所で、噴煙の左奥には阿蘇山ロープウェイの火口西駅、右奥には草千里と火山博物館なども見える。

第1火口の左側には底まで見える大きな火口がぽっかり口を開けている。このあたりに第4火口から第7火口がある。右上には阿蘇山ロープウェイの火口西駅もはっきり見える。

火口の左が砂千里ヶ浜で、火口群と中岳火口壁を隔てる谷間に深田久弥も歩いた砂千里ルートがくっきり見える。

中岳からゆるやかに続く尾根沿いを火口東展望所の小ピークまで進むと、そこから仙酔峡まで遊歩道が延びている。仙酔峡ロープウェイの火口東駅と中岳の間は立入禁止だが、火山ガスの流れてこない北風や東風の時にはエスケープルートになる。

火口を眺めをじっくり楽しんで、9:45 中岳を後にした。

高岳へゆるやかに上り返す。

内側と外側では表情が異なる中岳火口壁。

風がますます強くなってきて、谷側から雲が這い上がっては流れていく。

高岳の西側斜面を覆う一面の短い下草が、陽光を反射して眩しく輝いていた。

10:05 高岳に到着。

おにぎりを食べて、誰も登ってこない山頂でのんびり過ごした。

10:55 高岳東峰へ移動開始。

高岳稜線の雲上散歩は、北アルプスは南アルプスの稜線歩きに匹敵するほど気持ちがよかった。

稜線から眺めた阿蘇の火口丘群。

阿蘇市街地上に広がっていた雲も徐々に取れてきて、広大な阿蘇カルデラの北側が一望できるようになってきた。

雲海となっていたくじゅう連山の麓も雲が薄くなりつつあった。

雄大な展望を楽しみながら高岳東峰へ向かう。真ん中右に見える高台のようになった「天狗の舞台」が東峰の最高地点。

仙酔尾根に下る分岐の手前で登山者と初めてすれ違った。仙酔尾根から麓を眺めていた時、仙酔峡道路を車が1台入ってきて我が家の車の横に停まったように見えたが、おそらくその車の人と思われた。この日会った唯一の登山者だった。

11:05 仙酔尾根への下山路を通過。

谷底から雲が湧き出てきては、強風に流されて消えていく。風が勢いを増して、立ち止まると汗が冷えて寒いほどだった。

東側の稜線から麓を眺めていると、雲の中から虎ヶ峰(左下)と鷲ヶ峰(中央)が現れた。

稜線東端の天狗の舞台が近づいてきた。

背丈を超える潅木帯を下る。足元が見えないほど鬱蒼としてやぶ漕ぎに近い場所もあった。

鞍部から天狗の舞台を仰ぎ見る。

天狗の舞台の右側を巻くようにして、急斜面を上る。

11:25 高岳東峰(1,564m)に到着。

高岳東峰には山頂標のようなものはなかった。とりあえず一番高い天狗の舞台に上った。

東峰からの眺めもまた素晴らしかった。これ以上ない登山日和に最高の山に登れたという喜びをひしひしと感じた。

天狗の舞台から眺めた高岳北尾根の荒々しい岩壁。虎ヶ峰は鷲ヶ峰に隠れてしまった。

西側には高岳火口跡の大鍋が広がる。東西750m、南北500mの広さで、左奥には月見小屋が小さく見える。

阿蘇カルデラの南側に広がる南阿蘇の市街地と外輪山。

広い天狗の舞台を歩き回って360度の展望を楽しんだ。

東側の谷間からは強風で雲が吹き上げていたが、そのうち雲がとれて根子岳の裾野まで一望できた。

根子岳は五岳の中では最初に噴出した火口丘とも、カルデラ生成時に崩れ去った古い山体とも言われており、他の火口丘より際だって浸食が激しい。山頂中央の尖った天狗岩をはじめ、危険な岩稜帯が多くみられる。

11:50 高岳東峰から移動開始。

ちょっとしたやぶ漕ぎを終えて、再び頂上稜線に出た。

12:10 分岐から仙酔尾根へ。

日差しは強烈だったが、下りも心地よい風が吹いていた。

開放感抜群の大展望に、ほとんど疲れを感じなかった。

時間とともに雲はきれいにとれて、広大な阿蘇カルデラの北側半分を一望のもとに収めながらの下りとなった。

左に仙酔尾根、右は北尾根、その間が赤ガレ谷。

西側の楢尾岳。

尾根の半分ほどまで下りてきた。仙酔峡まではまだ遠いが、下りるのがもったないような気もした。

下るほどに道路工事の状況が気になってきたが、上からは何も動いていないように見えた。

高岳を振り返る。かなり下りてきた。

東側の高岳北尾根を見ると、虎ヶ峰(左)、ジャンダルム(真ん中)、鷲ヶ峰(右)が並んで屹立していた。

徐々に仙酔峡が近づいてきた。

鷲見平付近から仰ぎ見た高岳。素晴らしい山だった。

14:20 仙酔尾根登山口に到着。

仙酔峡からは車道歩きとなり、体感温度が一気にあがった。

下の崖が崩れて半分以上崩落した道路。途中、道路の真ん中にクレーン車が停まっており、中の運転手に声をかけると後ろを通るように合図してくれた。結局この運転手以外の作業員を見かけなかった。

車道を歩く頃にはすっきり雲が取れて、くじゅう連山が一望できるようになった。

車道から高岳を眺めると、鷲ヶ峰と虎ヶ峰の左側に竜ヶ峰も見えた。

道路工事の様子から復興にはまだまだ時間がかかるように思われた。予算の関係もあるのだろうが、これだけの観光資源をもったいない気がした。

15:05 駐車場の空き地に到着。もう一人の登山者は先に下山したらしく、我々の車だけになっていた。

下山後、昨日と同じくあその山温泉どんどこ湯で汗を流したが、入浴後に明日以降九州の天気が台風5号の影響で崩れることを知った。急遽予定を変更して宮島へ向かうことにしたが、大観峰から阿蘇山を見たいと思い、高速に乗る前に寄り道した。

左が根子岳、真ん中が高岳、右が往生岳と杵島岳。釈迦の涅槃像に例えられるが、根子岳が顔になるらしい。若干雲がかかっていたが、大観峰の展望を最後に見られてよかった。

北東側のくじゅう連山。祖母山とともに今回の九州遠征では縁がなかったが、次の九州遠征で必ず登ろうと決意を新たにした。

18:10 大観峰を出発。212号を北上するが、睡魔に襲われコンビニで仮眠。
21:10 古賀SAで仮眠を取って、博多とんこつラーメンを食す。よく食べに行く「一蘭」と味が似ていて美味しかった。明日の訪問地である宮島に近づこうと頑張るが、とにかく眠くて仕方がない。せめて九州は出ようと頑張るが、結局王司PAで力尽きた。そこに着くまでの10数キロは、油断すると意識が飛びそうな状態で、無理をすべきではなかった。
23:00 暑かったのでアイドリングをして車内を冷やしてから寝た。