2015年7月12日 日曜日
平ヶ岳
2,141 m

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コースタイム
鷹ノ巣登山口P 3:55 ⇒ 前坂 5:00 ⇒ 6:15 下台倉山 6:20 ⇒ 台倉山 7:15 ⇒ 白沢清水 8:05 ⇒ 9:35 池ノ岳(姫ノ池) 9:40 ⇒ 10:15 平ヶ岳 10:35 ⇒ 11:20 玉子石 11:25 ⇒ 11:50 池ノ岳(姫ノ池) 12:15 ⇒ 白沢清水 13:10 ⇒ 14:00 台倉山 14:10 ⇒ 15:00 下台倉山 15:05 ⇒ (5分休憩) ⇒ 前坂 16:10 ⇒ 鷹ノ巣登山口P 17:05
7/11 登山前日
11日(土)13:30 自宅を出発。途中、コンビニ弁当に箸がついていないことに気付き、尾瀬御池ロッジに寄って箸をわけてもらった。 18:15 登山口駐車場にやっと到着。駐車場は半分ほど空いていた。

駐車場の様子。

7時過ぎには寝る準備を整えて横になった。外は満天の星空。何度か目は覚めたが、車中泊にしてはよく寝られた。
7/12 登山当日

2:30 起床、3:55 登山スタート。出発の準備をしているハイカーが多かった。

なだらかな樹林帯をしばらく歩くと、ヘッドライトのいらない明るさになった。

出発から40分ほどで眺めのよいヤセ尾根の上りとなり、下台倉山(しもだいくらやま)へと続く稜線が一望できた。

南東の方角に見えた燧ヶ岳。

展望の利く尾根歩きが続く。こういうコースは大好きだ。

朝陽を浴びる下台倉山(左)と鷹ノ巣山(右奥)。

時間と共に陽光が下へ降りてきた。

5:00 東の稜線上に朝陽が昇ってきた。

五葉松のある前坂(1,197m)付近を上る。

展望がよい分、日差しをまともに浴びる。この日は朝から気温も高かったので、飲料水を多めに持参して正解だった。

隣に見える鷹ノ巣山(1,623.4m)の高さにだんだん近づいてきた。

背後の東側には素晴らしい展望が広がる。真ん中左は大杉山で右は燧ヶ岳。眺めを楽しみながら登れるので、この時点では疲れをあまり感じなかった。

下台倉山直下の長い急登を上り、6:15 下台倉山(1,604m)に到着。

燧岳を眺めながら小休止。出発から2時間20分、約750mを一気に上り、かなり足にきていた。

下台倉山からはなだらかなアップダウンが続いた。

下台倉山からしばらく進むと、稜線の向こうに平ヶ岳が見えた。目を疑うほどの遠さに、本コースの大変さを実感。

燧ヶ岳を前方に見ながら進む。

登山道脇に咲いていたイワカガミ。

落葉低木のウラジロヨウラク。

ときおり樹林帯に入る。何度かスズメバチに付きまとわれて恐かった。

日影にひっそり佇むツツジ科のギンリョウソウ。

稜線上は日差しが強かったが、ときおり吹き抜ける風が心地よく、絶好の登山日和に気合いが入った。いつの間にか燧ヶ岳の右奥に日光白根山が見えるようになってきた。

台倉山の手前で至仏山(右奥)も見えた。テント泊をしたと思われるハイカーと何度かすれ違ったが、このコースをテント泊装備で登るには、北アルプス登山なみの覚悟が必要だと感じた。

台倉山手前の稜線から見えた平ヶ岳と池ノ岳。3時間以上歩いて、まだこの距離。日帰り最難関に偽りなし。

ゴゼンタチバナとアカモノ。

木道が出てきて、7:15 台倉山(1,695m)に到着。

北東方面の眺め。左から高倉山、会津朝日岳、丸山岳、高幽山(たかゆうやま)、真ん中右に坪入山、窓明山(まどあけやま)、中門岳と会津駒ヶ岳。

南東側の眺め。左端に大杉岳、真ん中に燧ヶ岳。燧ヶ岳の左奥には台倉高山と孫兵衛山(まごべえやま)、右奥には日光白根山も見える。

アップダウンを繰り返して樹林帯へ入る。

7:25 台倉清水を通過。道標に平ヶ岳まで4.9kmの表示あり。まだまだ遠い。

台倉清水からは木道歩きが多くなった。8:05 白沢清水を通過。

ゆるやかに樹林帯を上ってゆくと、灌木と笹原の道となり、再び視界が開けてきた。

途中からオジさんハイカーがぴったり背後に着いてきて、何度か「お先にどうぞ」と促すが、「私は遅いから」と立ち止まって先へ行かない。どちらが速いかの問題ではなく、後ろにピタリとつかれるのが嫌なのだが、誰かについていくのがオジさんの頑張り方なのかもしれない。はっきり言うのも角が立つし、嫁のスピードは上がらないしで埒が明かない。写真を撮るにも不自由なので、先頭に立ってスピードを上げることにした。

笹原の急登をひたすら上る。嫁も頑張ってスピードを上げたようで、そのうちマンマークでついてくるオジさんハイカーを引き離した。

標高が上がるにつれて、タテヤマリンドウを目にすることが多くなった。

イワオトギリ。

池ノ岳手前の急登も長かったが、展望が疲れを癒やしてくれた。後発のハイカーが続々と上ってきていた。

足場のよい所まで一気に上っては、素晴らしい展望を眺めつつ嫁を待った。

標高を増すにつれて、北側の山も見えるようになってきた。左側に灰ノ又山と荒沢岳、真ん中奥には守門岳、浅草岳、村杉岳などが並び、右には高倉山、会津朝日岳、丸山岳などが見える。右側に見える湖は奥只見湖。

南側にはドーム型の平ヶ岳。左奥には至仏山と武尊山。

東側には会津駒ヶ岳と燧ヶ岳が大きく、その間には杉村岳、帝釈山、台倉高山、孫兵衛山なども見える。眼下には登ってきた稜線が一望できた。

池ノ岳山頂手前で嫁と先頭を交代。

登りつめると眺めのよい露岩に出た。

ハイマツの灌木帯に入ると池ノ岳山頂はすぐだった。

綺麗に咲いていたコバイケイソウ。

9:35 池ノ岳(姫ノ池)に到着。テント場にもなる板張りのデッキで登山者が休憩していた。

姫ノ池の向こうにはゆるやかな曲線をえがく平ヶ岳。

広々とした高層湿原の広がりに目を見張った。このような景色はまったくイメージしていなかったので驚いた。

姫ノ池の北東側にも木道が延びていて、もう一つのデッキがあった。

池ノ岳山頂でたくさん見かけたワタスゲ。

5分休憩して平ヶ岳山頂へ。中ノ岐(なかのまた)林道からと思われる団体が玉子石方面へ向かった。中ノ岐林道は一般車両進入禁止で、地元宿泊施設の利用者のみがバスの送迎を受けて、中ノ岐林道からのコース(通称・皇太子ルート)を利用できる。そのルートなら3時間で登頂可能だ。

オオシラビソの樹林帯を進む。

樹林帯を抜けると気持ちのよい木道歩きが続いた。

ゆるやかな山頂稜線に延びる木道。

木道脇にはチングルマの群生が広がっていた。

デッキがある場所を右に入ると三角点があった。

三角点(2,139.6m)に到着。山頂道標はここにあるが、本当の山頂はもう少し先にある。

木道の終点まで歩いて、10:15 ついに平ヶ岳(2,141m)の最高点に到着。道標などはなかった。

山頂にはハクサンコザクラの群生が広がっていた。

山頂に休むスペースはほとんどないが、登山者は少なかったので、木道の端に腰を下ろして休憩した。

まず目につくのは北西側の越後三山。大きな池塘の向こうに、八海山、中ノ岳、越後駒ヶ岳がずらりと並ぶ。

東側には燧ヶ岳。右側には日光の山々が並ぶ。

燧ヶ岳の右に見える山並み。左から女峰山、小真名子山、太郎山、大真名子山、大嵐山、男体山、金精山と続き、真ん中に日光白根山、さらに錫ヶ岳、笠ヶ岳、皇海山、袈裟丸山と続く。

南側には至仏山と武尊山。至仏山の手前は、右から大白沢山、ススヶ峰、赤倉山と続く稜線。

至仏山と武尊山。至仏山の左奥は西山で、右側(武尊山の手前)は笠ヶ岳。

西側の眺め。左に谷川連峰、真ん中左に柄沢山、右に巻機山。柄沢山の奥には苗場山も見える。剱ヶ倉山方面は行き止まりと表示されていたが、ルートは延びていたので少し先まで進んで写真を撮った。

左から阿能川岳、谷川岳、一ノ倉岳、茂倉岳、仙ノ倉山。真ん中右奥に横手山、佐武流山、岩菅山、右に苗場山。苗場山の手前は柄沢山。左の湖は奥利根湖で、一番手前の平らな山は水長沢山。

西側のアップ。手前の稜線は小沢岳と下津川山、その上に巻機山と割引山、一番奥には妙高山と火打山。妙高山の左隣には朝日岳と雪倉岳など北アルプスの山も幽かに見えていた。

10:35 もっとのんびりしたかったが、復路も長いので早々に玉子石へ向かった。

空中散歩のような木道歩きを楽しんでいると、池ノ岳のながらかな山容が見えてきた。左に見えるのは荒川岳。

池ノ岳の向こうには、飯豊山まで見えた。飯豊山の右手前は高倉山と会津朝日岳。左手前は御神楽岳。池ノ岳の山頂部には、姫ノ池と玉子石との分岐となるT字路が見える。

樹林帯を抜けて、玉子岩への近道となる分岐に出た。

雪渓の大きさが気になったが、近道で行くことにした。

テント場にもなる水場を過ぎて、雪渓歩きが始まった。若干滑るが、踏み跡があるので問題なく上れた。雪渓の上で池ノ岳からのルートと合わさり、左に折れて進んだ。

灌木の台地を越えると、玉子石へ続くルートが見えた。けっこう遠いと感じたが、展望のよさに励まされた。

ゆるやかに鞍部まで下って上り返す。途中で右に道を分けたが、それが中ノ岐林道へ下る皇太子ルートだった。

この小ピークを越えてもまだ先だったらかなりキツイと思っていたが、越えたところに玉子石はあった。

11:20 玉子石に到着。見事な景観に疲れを忘れた。必ず寄った方がよいと誰かが書いていたが、そのとおりだと思った。西側に広がる池塘の先には平ヶ岳(右)から剱ヶ倉山(左)へ続く稜線。その間には巻機山が見える。

玉子石は自然造形の奇岩だが、誰かが岩の上に載せたように見える。

反対の西側に回ると球体ではないことが分かる。

北西側の眺め。左に剱ヶ倉山、右には八海山、中ノ岳、越後駒ヶ岳の越後三山。

別格の存在感で列座する越後三山。

北側には越後の山がずらり。左に源蔵山、灰ノ又山、荒沢岳、右には浅草岳、杉村岳、高倉岳、会津朝日岳、丸山岳。

11:25 しばし眺めを楽しんで、池ノ岳へ向かった。

草地と灌木の台地を越えると、南側に平ヶ岳の広大な山頂部が一望できる。

強烈に眩しい雪渓を再び進む。

池ノ岳のT字路まで戻ってきた。

11:50 デッキの上はデポされたザックが数個あるだけだったので、腰を下ろしておにぎりを食べた。復路は4時間10分と、17時までに下山する目処もついて、やっと人心地ついた。

コースの多様性と山頂周辺の見事な景観。素晴らしい山だとしみじみ感じた。

12時半まで休むつもりだったが、早めに出てゆっくり下った方がよいと判断して、そそくさと準備をした。

12:15 下山開始。名残惜しい気持ちよりも、これからの大変な下りに考えが向いていた。

灌木帯を過ぎて、急下降の開始。砂礫の滑りやすい場所が多いので、慎重に下った。

尾瀬・会津の山々を眺めながらひたすら下る。

午後になってますます日差しが強く、下りでも汗が噴き出た。

20分下り続けて、やっと笹原まで下りてきた。

樹林帯に入るとゆるやかなアップダウンの繰り返しとなる。13:10 白沢清水を通過。

小ピークをいくつか越えて、13:45 台倉清水を通過すると、再び眺めのよい稜線歩きとなる。

14:00 台倉山に到着。すでにかなりバテていたので、水分を補給してしっかり休憩をとった。

燧ヶ岳。朝は逆光ぎみだったが、この時間には山の陰影がくっきり見えていた。

下台倉山への上りが見えてきた。ここまで来ると少しの上りもキツイ状態だったが、とにかく頑張る。

復路も展望のよさが大きな励みとなった。

平ヶ岳と同じように、高層湿原が山頂に広がる会津駒ヶ岳。

樹林帯に入ったり出たり、稜線を上ったり下ったりしながら進む。15:00 下台倉山に到着し、5分休憩した。

下台倉山を過ぎると北側に鷹ノ巣山が見えてくる。やっとここまで来たが、まだ先は長い。

下台倉山からはヤセ尾根を一気に750mほど下る。

いったん樹林帯に入って上り返す。

まだまだ下りは続く。

よく上ったと思えるほど下りが延々と続き、小ピークの次にまた似たような小ピークが現れた。

途中で腰掛けられる松の下枝で5分ほど休憩。後からきたハイカーが、同じ場所で休んでいた。

前坂付近まで来ると、後続のハイカーが続々と追いついてきて、次々に抜かれた。

高齢者や太った人もいたが、皆さん共通するのは驚くほどの健脚ぶり。

どんどん離されて、ただただ感心。

稜線からの眺めは相変わらず素晴らしいが、いつまでヤセ尾根が続くのかと辟易してきた。

16時半になってやっと樹林帯の下りとなった。

この看板が出てくると平坦で広い道となり、登山口は近い。やっとここまで来たと安堵した。

コースタイムに多少遅れても、16時半過ぎには下山できるだろうと考えていたが、甘かった。

17:05 駐車場に到着。本当に長かった。一足先に下山した方たちに「お疲れ様」と声をかけられたが、充実感と疲労感はみな同じで、共通の試練をくぐり抜けたことから生まれる淡い連帯感のようなものすら感じた。車は半数以下に減っていたが、翌日平ヶ岳に登る登山者が到着しつつあり、隣に来た中年男性も前泊するようだった。平ヶ岳のことを詳しく知りたい様子だったが、のんびりしていると帰りが遅くなってしまうので、少し話をして駐車場を後にした。
土曜日午後1時半に自宅を出発。東北自動車道・西那須塩原インターから国道400、121、352号と走り、鷹ノ巣登山口駐車場には午後6時過ぎに到着した。その日はそのまま車中泊、日曜日は2時半に起床して4時前に登山をスタートした。前半からヤセ尾根の急登が延々と続き、やっと登りつめた下台倉山付近で遙か遠くの平ヶ岳を目にした時、百名山の中では日帰り最難関と言われる本コースの大変さを実感した。日差しをまともに浴びる尾根歩きが多く、暑さにも体力を奪われた。しかしながら、その大変さに見合うだけのものがあった。展望のきく登山道は開放感があり、高山植物が群生する広くなだらかな山頂付近の眺めも見事だった。池塘が点在する高層湿原特有の風光明媚な景観がのびやかに広がり、その先には360度の大パノラマ。登山口までのアクセスが近ければ、何度でも登りたい山になっていただろう。山名から凡庸なイメージを抱いていたが、よい意味で見事に裏切られた。
下山後、檜枝岐村の「燧の湯」で疲れを癒やしてから長時間のドライブにのぞんだものの、22時過ぎに帰宅した時には精根尽き果てていた。登山口までのアクセスを含めて過酷な山だったが、大変さよりも素晴らしさが記憶に残る充実の山行となった。