2012年10月13日 土曜日

鳳凰小屋テント泊登山 1日目

地蔵岳

2,764 m

 1時起床、1時半出発。ネットで知ったナビには出ない舗装道を通り、4時25分に青木鉱泉到着。すでに9割方駐車場は埋まっていた。今回は大きな挑戦となる重い荷物を背負ってのテント泊登山なので、ドンドコ沢の滝を見ながらゆっくりと上った。我々が通った後にドンドコ沢のどこかで滑落事故があったらしく、白糸ノ滝へ向かう途中で、下の方から救助ヘリのホバリング音がずっと聞こえていた。ザックの重さにかつてない筋肉疲労を覚えながらも、昼過ぎには鳳凰小屋に無事到着。テント場はまだ5張ほどだったので、端にスペースを確保できた。

 この日は快晴の空が午後になっても続いていたので、テント設営後すぐに地蔵岳へ。樹林帯を抜けてからのザレ場は滑りやすくて疲れた身体にこたえたが、紺碧の空にそそり立つオベリスクの威容を目の前にすると、心はうきうきと軽くなった。残念ながらオベリスクの頂には登れなかったが、基部からの素晴らしい展望を楽しみながら充足した時間を過ごすことができた。テントに戻ってから早い夕食を食べて、明日の早立ちに備えて準備を整えてから横になった。

登山コースデータ
単純標高差 : 1,674 m
累積標高差 : +1,735 m / -450 m
コース距離 : 7.5 km
標準コースタイム : 7 時間 30 分
歩行データ
総歩行時間 : 7 時間 15 分
総行動時間 : 10 時間 40 分

 コースタイム

青木鉱泉P 4:50 ⇒ 7:10 南精進ヶ滝 7:35 ⇒ 8:15 鳳凰ノ滝 8:40 ⇒ 9:45 白糸ノ滝 9:55 ⇒ 10:20 五色ノ滝(下) 10:45 ⇒ 11:00 五色ノ滝(上) 11:05 ⇒ 12:05 鳳凰小屋 12:50 ⇒ 13:50 地蔵岳 15:00 ⇒ 鳳凰小屋 15:30

4:25 青木鉱泉 有料駐車場

4:50 真っ暗闇の中をスタート。コースに間違いがないか最初は不安を感じた。

しばらくすると工事迂回路となり、沢の左岸から右岸へ渡たり、砂防堰堤前を再び左岸へ渡った。

ヘッドライトで足元だけを照らしながら上ること小1時間、やっと明るくなった。

今回は荷を上げているという感覚が強かった。

嫁も10kg以上背負っているので、いつもよりザックが大きい。

岩ゴロの沢を渡って、さらに上る。

スタートしてから2時間足らずで左膝に違和感が。水がたまりつつあると感じていた。

7:10 南精進ヶ滝の入口に到着。

ザックをデポして滝見台へ。

急なクサリ場を上ると滝見台はすぐ。所要時間は5分ほど。荷物を下ろすと身体が浮くような感覚を覚えた。

滝は2段で落差は50mほど。

先客の若者2人組に写真を撮ってもらった。

来る時は気付かなかった滝壺への道を見つけたので、嫁を呼び戻して下りてみることにした。

少し危険な崖があり、途中まで下りてきた嫁は、結局怖いからと上で待機。

嫁が上から撮った写真。

滝壺まではさらに5分。下から見上げる南精進ヶ滝は水量豊富で迫力満点。

7:35 再出発。よい休憩になったが、南精進ヶ滝を過ぎると傾斜がきつくなった。

バランスを崩すと荷物に身体が振られて体力を消耗するので、慎重に歩を進める。

8:15 鳳凰ノ滝を示す2つ目の道標に到着。再びザックをデポして滝へ向かった。

5分ほどで到着。奥に鳳凰ノ滝が見える。

よく見ると左右の支流と本流が2つの滝となって合流している。落差は約60m。

8:40 登山再開。歩き出してすぐに「すいませーん!」と声がしたので呼び返すが、反応がないのでそのまま先へ。

さらに急登は続く。そのうちヘリのホバリング音が下から聞こえてきて、延々と続くのでひじょうに気になった。

9:45 白糸ノ滝に到着。滝は山道からすぐ入ったところ。落差は約20m。

鳳凰ノ滝から約1時間、きびしい急登の連続だった。しばらく休んで 9:55 先へ進む。

太ももとふくらはぎに、いつもなら下山後に感じるような張りを覚えながら黙々と上る。

10:20 字の汚い道標にリュックをデポして、五色ノ滝へ向かう。

ルート脇のアザミにちくちく刺されながら進むと、10分弱で五色ノ滝に着いた。

標高2,150mの最上流にある五色ノ滝。落差は50mを超える。

滝壺のすぐ近くから仰ぎ見るとさらに迫力は増す。青空と紅葉を背景に、垂直の岩盤を真っ直ぐに落ちる奔流はまさに名瀑、ほれぼれするような眺めだった。

飛沫が周囲に広がり、空気はひんやり。

すっかり満足してデポ地点に戻った。10:45 再スタート。

15分ほど上ると、また五色ノ滝の道標に出た。山道から少し入ると滝見台。

樹林の切れ間から五色ノ滝が見えた。滝の左岸に道が続いていて滝壺から直接上がれるのが分かった。

11:05 少し休んで登山再開。

スタートからすでに6時間超。鳳凰小屋までは残り1時間だと念じながら頑張った。

樹林の切れ間に見えた富士山。天気がよいので、この日のうちに地蔵岳へ登れそうだと感じた。

11:40 樹林帯を抜けて開けた場所に出た。

前方に地蔵岳のオベリスクが見えた。

しばらくドンドコ沢源流の河原歩きが続く。山腹が斑模様に紅葉していた。

12:05 ついに鳳凰小屋に到着。元気な女性従業員相手に手続きを済ませて、隣のテン場へ移動。

早立ちしたおかげでまだスペースは十分あった。一番奥の端に陣取って、すぐにテントを設営した。

手順をすっかり忘れていたが、作業をするうちに思い出した。設営後に地蔵岳へ向かう準備をした。

鳳凰小屋は湧水がいつでも利用できる。冷たく水量豊富でとても美味しい水だった。

出発前に小屋前のデッキで昼食のおにぎりをほおばる。小屋の主人が登山客と談笑していた。

デッキからの眺めはなかなかのもの。ナナカマドやダケカンバが綺麗に紅葉していた。

12:50 地蔵岳へ出発。飲料水など最低限必要なものは嫁のザックに入れて、私は空身で歩かせてもらった。

荷物が減って身体が軽くなると思いきや、足腰の筋肉疲労で上りがすぐにきつくなった。

樹林帯を抜けるとザレ場の歩きづらい上りとなる。前方にオベリスクを仰ぎながら、歩幅を小さくとってずるずるのザレ場を着実に上る。

背後の東側は、樹林帯が綺麗に紅葉していた。その向こうは甲府の街。

一直線に延びる飛行機雲がしばらくすると消えてしまったので、明日も晴れだと確信した。

足はパンパンに張って疲労はかなりのものだったが、快晴の空に気持ちは高揚して「やったやった」と声に出したいほどだった。

富士山の下山路にある「砂走り」のような道が続く。

ついに地蔵岳のオベリスクが近づいてきた。近づくほどにその巨大さを実感。

13:50 地蔵岳に到着。

お地蔵様がさまざまな場所に鎮座していた。

間近から見上げるオベリスクはゴツゴツと荒々しくて、遠目で見た印象とはまるで異なる。巨大な花崗岩が混沌と積み重なった上に、つぼみのような岩塔が突き出ている。

オベリスクの岩塔に挑戦する登山者の姿が見えた。

岩をよじ登っていくと、賽の河原がみるみる遠くなる。

南東には観音岳が大きい。稜線上を歩くハイカーが小さく見えた。左奥には富士山。

西側の眺め。左から仙丈ケ岳、アサヨ峰、甲斐駒ケ岳と並ぶ。

南西方面。左から農鳥岳と西農鳥岳、間ノ岳、中央右に北岳。手前は赤抜沢ノ頭から高嶺に続く稜線。

北東方面。左から御座山、小川山、金峰山、雲がちょっとかかった国師ヶ岳と北奥千丈岳、右には大菩薩嶺。

オベリスクから下をのぞくと、かなりの高度感がある。

岩塔に挑戦していた人があきらめたので、自分の番だと岩塔直下に至る道を探り、よじ登った。
しかし尖頭のロープ下まで登れずにしばらく右往左往。あれこれ登り方を試しているうちに、「左側に回って岩の中に入る」と、誰かのHPに書いてあったことを思い出した。
左側へ回ると岩の割れ目を発見。身体をよじって中に入り、上へ登るとロープ下に出た。しかしながら、肝心のロープに手が届かない。ネットで見た写真では下までロープは垂れており、腕力で登れると踏んでいたのだが…。クラックに手を入れて途中まで登るしかないが、降りることを考えると自分のスキルでは無理だと判断せざるを得なかった。金峰山の五丈石同様、大きな宿題を残してしまった。

花崗岩はあまり滑らないが、岩が大きくて足場が少ないので慎重に降りた。

14:45 子授け地蔵が並ぶ賽ノ河原へ向かった。

賽ノ河原はオベリスクのすぐ隣。ちょうど誰もいなくなった。

ここの地蔵を借りて持ち帰り、家に祀っておくと子宝に恵まれるという。

さまざまな形、表情の子授け地蔵が並ぶ。ちなみに子供が生まれた時は、地蔵を2体を持ってこの地へ返す。その際、親類縁者が太鼓をたたきながら登って行くので、下の沢を「ドンドコ沢」と呼ぶらしい。

陽が落ちてきても空は快晴。重い荷物を背負って上った甲斐があったと、しみじみ感じた。

お地蔵さんの土台を借りてタイマー撮影。

13:00 満ち足りた気分で下山開始。

地蔵岳の道標から見上げたオベリスク。リンドウのつぼみのようにも見えるし、カプセルが突き刺さっているようにも見える。

明日登る観音岳を正面に見ながらザレ場を下る。富士山も終日見えていたし、今日一日素晴らしく充実していた。

上りづらいザレ場も下りは楽々。砂走りの要領でどんどん下った。

樹林帯の急坂を進む。帰りは早く感じた。

15:30 鳳凰小屋に戻った。設営中のハイカーも数名いて、テン場は徐々に埋まりつつあった。少し休んでからマットを膨らませたり、明日の早立ちに備えて持ち物の準備をした。

夕飯はアルファ米のカレーピラフとカップヌードル。食後にコーヒーを飲んで、後は寝るだけとなった。

18時過ぎには歯をみがいて横になった。テン場は一杯で、カラフルな微光が闇に浮かんでいた。