2019年8月2日 金曜日

唐松岳頂上山荘テント泊 初日

唐松岳

2,696 m

2時起床、2時50分出発。高速を順調に走行し、黒菱第三リフト駐車場には6時15分到着した。リフトを乗り継ぎ、八方池山荘から登山を開始。2ヶ月ぶりの登山である上に、今回は2泊3日のテント泊装備だったので、極力ゆっくり上ることを心掛けた。幸いテント場までは歩きやすい道が続き、登山道脇に咲く多くの高山植物が、キツイ上りの励みとなった。翌朝登頂することも考えてたが、天気がよかったので頂上山荘下のテント場に幕営してから唐松岳に登頂した。ガスが出ていてあまり遠望はきかなかったが、山頂でのんびりと気持ちのよい時間を過ごすことができた。午後は西日が入ってテントの中は蒸し風呂のようにより2千m超の高所とは思えない暑さだったが、日が沈むと涼しくなった。

 翌日の五竜岳ピストンに備えて19時過ぎには横になった。夜中に雨が降ってテントの四隅がすぐ濡れてきたが、幸い少量の雨で寝袋が濡れるほどではなく、テント泊では珍しいほどぐっすり寝ることができた。

登山コースデータ
単純標高差 : 866 m
累積標高差 : +930 m/-170 m
コース距離 : 5.4 km
標準コースタイム : 4 時間 35 分
歩行データ
総歩行時間 : 5 時間 25 分
総行動時間 : 7 時間 45 分

 コースタイム

八方池山荘 7:45 ⇒ 八方ケルン 8:45 ⇒ 第3ケルン 9:05 ⇒ 10:55 丸山ケルン 11:00 ⇒ 12:20 唐松岳頂上山荘テント場 12:55 ⇒ 13:25 唐松岳 15:05 ⇒ 唐松岳頂上山荘テント場 15:30

6:15 黒菱第三リフト駐車場

黒菱第三リフトの無料駐車場に到着。停められるか少し心配していたが、まだ5割も埋まっていなかった。

リフトの始発は(7:15)だが、7時を過ぎると登山者が並び始めたので列に加わった。チケットの販売は5分前くらいから始まった。

チケットは黒菱第三リフトとグラードクワッドリフトの往復に八方温泉の入浴券を付けて、1人1,600円だった。第三リフトは荷物が大きいので1人ずつ乗った。足が地面に届きそうなところでは、足元に咲く高山植物がよく見えた。

約7分で上に到着。少し移動して次はグラードクワッドリフトに乗った。

グラードクワッドは4人乗りなので一緒のリフトに乗った。

約5分で八方山池山荘に到着。靴ひもを締め直して、7:45 登山スタート。ここからは自分の足で上る。

歩き始めは高山植物のオンパレード。ユリ科のオオバギボウシ。

バラ科のヤマブキショウマ。

キク科のハッポウアザミ。高山型のアザミで、八方尾根にだけに生える固有種。

バラ科のシモツケソウ。鮮やかなピンク色がコース上のいろんなところで目についた。

最初は整備された木道をゆるやかに上って行く。

バラ科のイワシモツケ。マルバシモツケの葉が重鋸歯を持っているのに対して、本種の葉は全縁に近い。

ナデシコ科のタカネナデシコ。

群落があちこちに見られたキンコウカ。

ひっそり咲いていたラン科のホソバノキソチドリ。花を紹介する説明板がなかったら見逃していたかもしれない。

赤紫色が特徴的なバラ科のワレモコウ。花弁がない穂状の集合花。

ゴマノハグサ科のクガイソウ。ところどころに大群落を作っていた。

オオバコ科のミヤマクワガタ。この花を見たとき、間違えてカプトムシソウと言ってしまった。

シソ科のイブキジャコウソウ。

可愛い花を咲かせるリンドウ科のハッポウタカネセンブリ。八方尾根の固有種でタカネセンブリの蛇紋岩変異らしい。

初めて見たトウダイグサ科のハクサンタイゲキ。秋には綺麗に紅葉する。

カヤツリグサ科のワタスゲ。別名スズメノケヤリ(雀の毛槍)。

淡いピンクと紫の組み合わせは、ハマウツボ科のヨツバシオガマ。

人はまばらだったので、前後を気にすることなく花の写真を撮りながら上った。

明るい赤みの紫色が綺麗なキク科のミヤマアズマギク。

ミツガシワ科のイワイチョウ。別名ミズイチョウ。

キク科のハッポウウスユキソウ。八方尾根の固有種で、高山型のミネウスユキソウとよく似ている。

マツムシソウ科のタカネマツムシソウ。数は少なかったが、比較的大きな花なのでよく目立つ。

8:35 トイレ棟を過ぎると第2ケルンが現れた。奥には八方ケルンも見える。

ニシキギ科のウメバチソウ。

すぐ目につくだけの存在感があるユリ科のクルマユリ。

8:45 八方ケルンを通過。

オトギリソウ科のシナノオトギリ。本種の葉の黒点は縁にだけあって葉面には明点があるが、よく似たイワオトギリの場合は、黒点が縁にはあまり無くて葉裏全体に散らばり、明点はほとんどない。

ナデシコ科のクモマミミナグサ。ミミナグサの高山型であるミヤマミミナグサの変種で、北アルプス北部のみに分布する固有種とされる。標示でクモマミミナグサと分かったが、タカネミミナグサとの見分け方がいまひとつはっきりしない。

八方池が見えてきたが、ガスが出ていたので寄らずに先へ進んだ。八方池まで登って帰る人も多いようだ。

9:05 八方池の近くにある第3ケルンを通過。

第3ケルンから眺めた八方池。

出発から1時間半を経過して嫁がペースダウン。今回ザックの重さは20kgを超えており、立っているだけで疲れるので止まらずに一定ペースで進んでほしいのだが、立ち止まることが多くなってきた。

ツツジ科の落葉小低木、ミヤマホツツジ。花弁が3枚反り返り、花柱も象の鼻のように巻いている。

アカネ科のキバナノカワラマツバ。花が白いものはカワラマツバと呼ぶ。

この日は太陽が雲やガスに遮られている時間帯が多かったが、日差しが出るととたんに暑さを感じた。

一輪だけ見かけたラン科のハクサンチドリ。

サクラソウ科のオオサクラソウ。当初ユキワリソウだと勘違いしていた。黄色い花はキンポウゲ科のミヤマキンポウゲ。

ミヤマキンポウゲの群落。

アヤメ科のヒオウギアヤメ。唐突な感じで一輪咲いていた。

いったん樹林帯に入ったが、高山植物のオンパレードは続いた。

ハマウツボ科のエゾシオガマ。エゾとつくが北海道に限らず本州中部以北の高山に分布している。

ひっそり咲いていたユリ科のエイレンソウ。

スイカズラ科のオオヒョウタンボク。一瞬、虫がとまっているように見えた。

10:10 扇雪渓に着いた。絶好の休憩ポイントだが、嫁に休むそぷりがないのでそのまま通過した。

山ではよく見かけるキク科のミヤマアキノキリンソウ。

ツツジ科のアオノツガザクラ。今回他では見かけなかった。

扇雪渓を過ぎると嫁は完全に失速。本人的にはまだ行けるつもりだったらしいが、やはり休憩すべきだった。

数輪だけかたまって咲いていたユリ科のコバイケイソウ。この花もよく目立つ。

ミズキ科のゴゼンタチバナ。名前は白山の「御前峰」に由来しており、葉が6枚にまで成長した株が花を咲かせる。

10:55 丸山ケルンに到着。

少し遅れて嫁も丸山ケルンに到着。嫁はシャリバテ気味だったので、少し先の腰を下ろせる場所で行動食をとった。

食虫植物の一種、タヌキモ科のムシトリスミレ。

キク科のウサギギクが点々と咲いていた。

リンドウ科のタテヤマリンドウ。よく見るとたくさん咲いていた。

タテヤマリンドウの近くに、ミヤマリンドウも咲いていた。

11時を回り、後ろから来たハイカーに抜かれることが多くなってきた。

出発からすでに3時間以上を経過。傾斜はそうでもないが、嫁はかなりキツそうに見えた。

ツツジ科のアカモノ。

嫁に先行して歩いていると、目の前をライチョウが横切った。

草の斜面をどんどん上って行くので、あわてて写真に収めた。嫁も見ることができたが、他の登山者は気づかなかったのではなかろうか。

キク科のタカネヤハズハハコ。花はヤマハハコと似るが、葉はヤマハハコのように開かない。

ガスが切れて稜線が見えてきた。まだ距離がありそうなので少しがっかりしたが、気を取り直して歩を進めた。

大きな群落をつくっていたバラ科のチングルマ。

岩の急坂を一歩ずつ上る。日差しの出る時間帯が増えて、暑さが増してきた。

急坂をひと上りすると、唐松岳の山頂部が見えた。

ツツジ科のハクサンシャクナゲ。へたり気味の花が多かったが、やっと綺麗に咲いているものを見つけた。

崩落気味の岩尾根を上る。ザックの重みに肩がつらくなり始めていたので、この辺りは非常にキツかった。

キキョウ科のイワギキョウ。チシマギキョウに似るが、本種は花冠の裂片に毛がない。

稜線の上に出ると目の前に唐松岳が現れた。

眼下の唐松岳頂上山荘へ下る。登山道から山荘はまったく見えなかったので、いきなり目的地に着いた感じで嬉しかった。

12:20 山荘に到着。テント場利用の手続きは嫁に任せて、私は場所取りのためにすぐ下のテント場へ急いだ。

一番上のテント場の奥によい場所を見つけた。一見スペースがないように見えるので、先に着いた登山者たちは素通りしていた。

30分足らずで幕営終了。幕営地が下の方になると山荘への上り返しが大変なのでラッキーだった。

天気がよいので少し休んでから唐松岳へ向かった。

山荘から唐松岳までは20分ほど。荷物は一気に軽くなったが、疲れで身体は重たかった。

再びシャリバテ気味となった嫁は、何か食べるために途中で休むと言うので、先に山頂へ向かった。

13:25 唐松岳に到着。後から来た嫁と記念撮影。

時間はたっぷりあったので、山頂でひたすらのんびり過ごした。山頂に吹く風が心地よかった。

南側には明日登る五竜岳。ガスに覆われて見え隠れしていた。

北側には白馬三山が見えるはずだが、ガスに覆われていた。眼下には白馬三山へ続く不帰ノ嶮(かえらずのけん)と呼ばれる険しい稜線。登ってくる登山者が見えていた。

北東側には雪の残る唐松沢。75歳のおば様グループが登ってきて、元気だなぁと感心していたのだが、延々と大きな声でおしゃべりを続けるのでそのうちうんざりした。山頂の時間はみんなのものなのだから、少しは回りの人たちに気を配って欲しい。

おば様グループがいなくなると山頂に再び静寂が訪れた。

15:05 ガスが濃くなってきたのでテント場へ戻ることにした。

ツツジ科のコケモモ。イワツツジに似るが、コケモモの葉は楕円形で花よりやや大きく、イワツツジの葉は広楕円形で花よりずっと大きい。

山荘までの下りはあっという間。山荘手前の砂礫地にコマクサが群落していた。

高山植物の女王と呼ばれるコマクサ。

山荘まで戻ってきた。水を購入してからテント場へ戻った。

平日とはいえ夕方には下の方までテントが張られていた。いつものようにレトルト食品で夕飯を済ませて、早めに寝る準備を整えた。

西日が強烈でテントの中は北アルプスの稜線とは思えない暑さだったが、18時半頃、唐松岳の向こうに日が沈むと涼しくなった。明日の五竜岳登山に備えて19時には就寝。夜は雨が降っていたが、寝袋がいらないくらい暖かかった。