2019年4月4日 木曜日

九重連山 坊ガツルテント泊 2日目

九重連山 縦走

久住山 1,787 m

 深夜0時過ぎから1時間近く満天の星空を眺めた。身体が冷え切って、その後はあまり寝られなかったが、素晴らしい体験だった。明るくなると同時にテント場を出発。九重連山は、坊ガツルを境に東側の「大船山系」と西側の「久住山系」に山域が分けられるが、この日は白口岳から稲星山、中岳、天狗ヶ城、久住山と久住山系の峰々を縦走した。山は朝から雲ひとつない快晴で、変化に富む雄大な景観を楽しみながら、丸一日山歩きを満喫した。各山頂からの大展望も素晴らしかったが、下山時に通った北千里ヶ浜の荒涼とした空間も印象深かった。時期的に山に入っている登山者が少なく、テント泊なので下山時間を気にせずに済んだこともよかった。

 下山すると坊ガツルには我が家のテントだけで、そこへひょっこりニホンアナグマが現れるという予想外のおまけまでついた。この一日だけで、今回の九州旅行が大成功だと言えるほど、忘れ難い素晴らしい山行となった。

登山コースデータ
単純標高差 : 587 m
累積標高差 : 850 m
コース距離 : 9 km
標準コースタイム : 6 時間 20 分
歩行データ
総歩行時間 : 6 時間 55 分
総行動時間 : 9 時間

 コースタイム

坊ガツル 5:50 ⇒ 法華院温泉山荘 6:05 ⇒ 7:55 白口岳 8:20 ⇒ 8:55 稲星山 9:10 ⇒ 9:45 中岳 10:00 ⇒ 10:20 天狗ヶ城 10:35 ⇒ 御池 10:45 ⇒ 11:20 久住山 12:15 ⇒ 北千里浜 13:35 ⇒ 法華院温泉山荘 14:30 ⇒ 坊ガツル 14:50

0:20 坊ガツル

0時過ぎからテントの外で満天の星空を眺めた。星屑と呼ぶにふさわしい無数の光は、本来の夜空とはこういうものだと思い出させてくれる。実際に目にした光景には程遠いが、デジカメではこれが限界。1時間ほど外にいて、身体がすっかり冷え切ってしまった。

よく寝られなかったので、朝までが長かった。5時頃嫁を起こして、身支度を整えた。

5:50 坊ガツルを出発。

6:05 法華院山荘に到着。元は九重山法華院白水寺という天台宗の一大霊場で、お寺の衰退後、1882年から山宿となった。

三俣山の山頂部が朝陽に赤く染まっていた。

山荘から北側の鉾立峠へ向かう。

木道の後はゆるやかな上りが続く。

早朝からの雲ひとつない快晴に、今日は素晴らしい一日になると確信した。

6:40 鉾立峠に到着。朝は風が強いと思っていたが、そうでもなかった。

北側の雄大な景色を眺めながら上る。

峠から白口岳までの標高差は300m以上。急峻な上りに面食らったが、縦走路でこれ以上大変なところはなかった。

7:55 白口岳(1,720m)に到着。山頂は風が強かったが、素晴らしい展望にテンションが上がった。

登ってきた北東側。左に平治岳(1,643m)、真ん中あたりが北大船山(1,706m)で右が大船山(1,786m)。手前は立中山(たっちゅうさん 1,465m)で、坊ガツルはその左。

南西側には次に向かう稲星山(1,774m)がずっしりそびえる。

西側の眺め。中央が中岳(1,791m)で、その左奥に久住山(1,787m)が見える。

北側の眺め。左は三俣山で、右に平治岳が見える。真ん中右には坊ガツルも見える。

白口岳からは坊ガツルの全貌がよく見えた。我が家のテントも目視できた。

移動を開始したが、間違った踏み跡を追って西側に進んでしまい、時間をロスしてしまった。

白口岳にいったん引き返して地図を確認し、8:20 今度は稲星山へ向かう正しい道を下った。

5分ほどで平坦な鞍部に出た。ここからゆるやかに上り返す。

しばらく歩いて白口岳を振り返る。先ほどは間違えて、左(西側)の断崖まで進んだらしい。

若干きつくなった傾斜をせっせと上る。背丈を超える灌木帯もあったが、ほとんどの場所で展望がきいた。

傾斜はすぐにゆるくなった。

山頂近くは砂礫の道となった。見た目よりも近く感じた。

8:55 稲星山(1,774m)に到着。山頂標は置かれていた。

西側の久住山と星生山(右奥)。

北西側。左から星生山、天狗ヶ城、中岳。

北東側。真ん中に白口岳。その後ろに平治岳と大船山。平治岳の上には由布岳も見える。

360度の大展望を楽しみながらしばし休憩。南側には祖母山(左)と阿蘇山(右)も見えていた。

いかにも火山という感じの阿蘇山。左から根子岳、高岳、烏帽子岳、杵島岳と続く。

祖母連山。左に傾山(かたむきやま)と大崩山(おおくえやま)、右に祖母山。

9:10 移動開始。久住山へそのまま向かうこともできるが、まずは中岳へ。

眺めを楽しみながらのんびり歩いた。

10分ほどで鞍部に出た。やはり見た目よりも近い。分岐を過ぎて中岳の上りにかかる。

鞍部からは100mほどの上り返しとなる。ここもゆっくりマイペースに上った。

ちょっとした鎖場もあった。

9:45 九州本土最高峰の中岳(1,791m)に到着。以前は久住山や大船山が最高峰とされていたが、1980年の再測量で中岳が最高峰とされた。ちなみに離党を含む九州最高峰は宮之浦岳(1,936m)である。写真は東側の大船山と白口岳。

南側の稲星山。背後には祖母連山。

西側の眺め。左に久住山、右に天狗ヶ城と星生山。中央には火口湖の御池(みいけ)が見える。

北側の三俣山。右には平治岳と由布岳も見える。狭い山頂ではあるが、ここもまた360度の大展望が広がっていた。

10:00 天狗ヶ城へ向かう。ここまで誰ともすれ違わなかったが、天狗ヶ城の頂に人の姿が見えた。

ジグザグに標高を下げる。眼下には三俣山と噴煙を上げる硫黄山が見える。

遮るものがないので、とにかく眺めがよい。何度も立ち止まっては周囲の景観に目をやった。

5分ほどで鞍部に下りた。

山頂の手前に大岩が見えてきた。

大岩の右側を巻くようにして山頂へ。

10:20 天狗ヶ城(1,780m)に到着。眼下に結氷している御池が見えた。

南西側には久住山とこれから歩くルートがよく見えた。右側には肥前ヶ城(ひぜんがじょう)と扇ヶ鼻が重なって見える。

北西側の眺め。真ん中左に星生山、右に湧蓋山(わいたさん 1,500m)。星生山の東側(右手前)に荒涼とした山肌を見せているのが硫黄山(1,580m)で、噴煙も見える。

北側の三俣山。右奥には由布岳もくっきり見える。

北東側の平治岳と大船山。

東南東側。先ほどまでいた中岳と稲星山。

遮るものがないので、どの山頂も展望が素晴らしくよい。ここでも眺めを十分楽しんでから移動を開始した。

10:35 次は御池の北側をまわって久住山へ向かう。

下るほどに青緑に輝く御池が近づいてくる。全面氷結はしておらず、氷が融けて水面が一部で見えていた。

池畔に降りられそうなので、御池へ寄り道して行くことにした。

10:45 御池の水辺に到着。

氷はそれほど厚くなく、ストックで割ることができた。ちなみに冬は湖面を歩けるくらい厚く氷に覆われるらしい。

御池を後にして久住山へ。

久住山の手前にある火口跡は「空池」。御池よりも標高は低いようだが、地質が違うためかこちらには水がない。

空池の縁を歩いて、いよいよ久住山の上りにかかる。

ゆるやかなアップダウンを越えていく。

ザレの少し歩きづらい道が続く。

振り返って眺めた天狗ヶ城。

山頂部は東西に長く、最高点は西側の端にある。

11:20 久住山(1,787m)に到着。高さは中岳に譲るが、一等三角点がある九重連山の主峰である。

広々した山頂は岩がゴロゴロしており、適当な岩にカメラを置いてタイマー撮影できた。

西側。手前の平らな肥前ヶ城(1,685m)と、その先の扇ヶ鼻(1,698m)。名前が載っていない地図も多いが、久住山から眺めると意外に大きな山であることがわかる。

北西側の星生山。このあと星生山に登ることも考えていたが、無理はせずにカットすることした。頂きを欲張るよりも、久住山でのんびりすることにしたわけだが、自分も歳を取ったらしいと、昨日大船山で会った青年のことが思い出された。

北側には硫黄山と三俣山。硫黄山の右に北千里ヶ浜が一望できた。

北東側。左から三俣山、天狗ヶ城、中岳、大船山。

三俣山と天狗ヶ城の間に見えた由布岳。綺麗な双耳峰であることがわかる。由布岳の右は鶴見岳。

南東に見えた祖母連山。

南西には阿蘇の山々。360度の大展望を眺めながら、しばし至福の時間を過ごした。よい日に登れたことを嫁と何度も喜んだ。

12:15 下山開始。登山者は5人位に増えていたが、静かな山頂であった。

登ってきた岩ゴロの道を進む。

登山道は岩ゴロだが、6月になると付近一帯にコケモモの大群落が見られ、国の天然記念物にも指定されている。

正午を過ぎて、遠くに歩いている登山者の姿がちらほら見えるようになってきた。

空池近くの分岐まで戻ってきた。久住分れ方面へ向かう。

久住分れの分岐付近には、避難小屋と簡易水洗のバイオトイレがある。

久住分れから北千里ヶ浜へ続く急坂を下る。

10分ほど下ると傾斜がゆるくなった。踏み跡がたどり難いせいか、ルートを示すペイントが沢山の石に塗られていた。

広々とした北千里ヶ浜に入った。見たことがない異質な景観にまず驚かされた。

上から眺めた印象よりもすり鉢状の底が広く、荒涼たる風景は月のクレーターを思わせた。

南西の星生山方面。四方を火山特有のガレた山々に囲まれているのだが、その形や表情がどの方向も違っていた。

北西側に屏風のように広がる硫黄山。写真では周囲全体の印象は伝わらないが、生き物の気配が感じられず、三途の川はこういう場所にあるのではないかと感じた。ちょっと他では見られない殺伐荒涼とした特異な光景に、強烈な印象を受けた。

近年まで硫黄が採掘されていた硫黄山は今なお活発に活動を続ける活火山であり、1995年に約250年ぶりに水蒸気爆発を起こしている。麓の北千里ヶ浜の立入禁止は数年後に解除されたが、付近を通過する時は有毒ガスに注意する必要がある。

南東側は中岳と天狗ヶ城の北西面に当たる。

北千里ヶ浜を進むごとに三俣山が近くなってくるが、名前の由来どおり三俣山に3つのピークがあることがよくわかる。

北側の三俣山西峰(1,678m)を正面に見ながら進む。周囲の山を形成する岩の大きさは近寄るとよくわかる。

まったく予想だにしなかった北千里ヶ浜の強烈なインパクトに、九重連山の素晴らしさをいやましに実感した。

北千里ヶ浜の向こうに遠ざかる久住山と星生山。ちなみに星生山の「ほっしょう」は、仏教用語の法性からきているらしい。

前方に大船山が見えてきた。その右に見えるのが猿岩。

サルが座っているように見えるから猿岩らしいが、上の部分が背を丸めたサルに見えなくもない。

大岩の間を抜けてゆく。

左に連続する堰堤を見ながら下っていく。東側の正面には平治岳と大船山。坊ガツルも見えてきた。

三俣山と連続する堰堤。よほど土砂崩れが酷いのだろう。

法華院温泉山荘の屋根が近づいてきた。その向こうに立中山も見えてきたが、立中山の「たっちゅう」は、仏教用語の塔頭が由来なのではなかろうか。

14:30 法華院温泉山荘に到着。山荘の建物は思ったよりも大きかった。個室が20室(ほとんどが6畳)あり、個室が満室になると120人収容の大部屋になる。自販機、売店完備で、酒たばこに缶詰まで買えるらしい。

山荘を通過。山荘付近は舗装路だったが、大船林道から山荘まで車で入れるようだ。(一般車両は通行禁止)

木道を歩いて坊ガツルのテント場へ向かう。

14:50 テント場に到着。他のテントは撤収していて、この夜幕営していたのは我が家のテントだけだった。

夕食前にうたた寝しているとニホンアナグマが現れた。近眼の可愛い奴で、この山行にさらなる彩りを添えてくれた。坊ガツルのページに写真を沢山載せた。天気予報がいま一つなので、明日は早めに下山しようと考えながら、暗くなると同時に寝てしまった。