2017年10月1日 日曜日

苗場山

2,145 m 2回目

 2時起床、2時25分出発。現地には4時55分到着。朝から嫁の体調が悪くてどうなることかと思ったが、ゆっくり進むことで何とか山頂まで辿り着いた。中ノ芝あたりが紅葉のピークを迎えており、東側に広がる上信越の山並と鮮やかな紅葉の広がりは、この時期だけの見事な景観をつくり出していた。稜線や山頂からの遠望もよく利いて、妙高連山や北アルプスなど、見えるべき山はすべて見えていた。湿原の散策はせずに、広大な山頂台地の池塘群と草紅葉を眺めながら、方形ベンチでのんびりと気持ちのよい時間を過ごした。

 帰りは嵐山ICの手前で10数キロの事故渋滞に巻き込まれてしまい、帰宅は20時過ぎとなった。長い一日に最後は疲労困憊したが、秋らしいさわやかな天気に恵まれて、今シーズン初の紅葉登山を満喫できた。

登山コースデータ
単純標高差 : 925 m
累積標高差 : 1,250 m
コース距離 : 14.7 km
標準コースタイム : 8 時間 25 分
歩行データ
総歩行時間 : 8 時間 55 分
総行動時間 : 10 時間 30 分

 コースタイム

第2リフト町営駐車場 6:05 ⇒ 和田小屋 6:40 ⇒ 下ノ芝 8:05 ⇒ 8:55 中ノ芝 9:05 ⇒ 上ノ芝 9:25 ⇒ 10:00 神楽ヶ峰 10:10 ⇒ お花畑 10:30 ⇒ (5分休憩) ⇒ 11:50 苗場山 13:00 ⇒ お花畑 13:50 ⇒ 神楽ヶ峰 14:20 ⇒ 上ノ芝 14:40 ⇒ 中ノ芝 14:55 ⇒ 15:20 下ノ芝 15:30 ⇒ 和田小屋 16:15 ⇒ 第2リフト町営駐車場 16:35

 

関越道を走っていると、いきなり嫁が嘔吐したので驚く。その後も何度か吐いてしまい、PAでしばらく休んだ。最近、更年期障害の症状が出ていることを聞いていたが、それに加えて以前からたまに発症する神経性胃炎が疑われた。現地に着いても症状に変化なし。単独登山なら7時間位でいけそうだが、甲武信ヶ岳のように散策できる場所(西沢渓谷)が近くにないので、車で留守番というわけにはいかない。ホルモンのバランスや神経性のものであれば歩いた方がよくなるような気もするし、週末の秋晴れを無駄にしたくはない。とりあえず1時間ほど様子を見ることにした。仮眠を取るようにすすめたが、しばらくするとまた吐いてしまい、いよいよダメかと思ったが、吐いてすっきりしたようで、嫁は出発の準備をし始めた。

駐車場手前の数キロは舗装が剥がれた悪路だが、どんどん車が入ってくる。5時半頃には満車になっていた。

6:05 駐車場を出発。和田小屋まで続く林道を様子を見ながらゆっくり歩いた。

後続ハイカーに次々と抜かれたが、とにかくゆっくり進む。林道の路肩に停めている車が意外と多かった。

林道脇に群生していたウメバチソウ。

6:40 和田小屋に到着。

和田小屋の手前にあるかぐらゴンドラ山頂駅。

和田小屋からかぐらスキー場のゲレンデに入り、しばらく歩くと登山口がある。

登山口からは熊笹の生い茂った岩ゴロの上りとなる。

登山口から1時間ほど歩くと紅葉が目立つようになってきた。

8:05 下ノ芝(1,703m)に到着。2時間歩けたので、食べても大丈夫なら山頂まで行けると感じていた。

登山道の脇に何合目か書かれた道標を見かけたが、和田小屋が五合目であることを後で知った。

下ノ芝から少し進むと西側に小松原コースの稜線(1,984mピークのあたり)が見えた。我々が歩いているのは祓川(はらいがわ)コースで、小松原コースとは神楽ヶ峰の手前で合流する。

ゆっくり着実に石ゴロの湿った道を上る。涼しくて、登るには丁度よいくらいの気温だった。

ユリ科のイワショウブ(岩菖蒲)。つぼみは花が終わるにつれて赤くなり、実がなる。 

下ノ芝を過ぎるとますます鮮やかな紅葉が目につき始めた。

空気はひんやりして虫もおらず、登山に最適の季節になった。

かぐらスキー場の最上部にある、かぐら第5ロマンスリフトの終点(1,845m)が見えてきた。

リフトを越えて、樹林帯を抜けると中ノ芝のベンチが見えてきた。

この辺りは森林限界を超えておらず、日本海から吹き付ける強風によって樹木が育たないため背の低い灌木帯となっている。

中ノ芝周辺の紅葉はまさにピークを迎えていた。

8:55 ベンチに場所を確保してひと休み。中ノ芝は北東から東側の眺めがよく、越後三山や巻機山、燧ヶ岳や日光白根山など、上越国境から栃木、福島までの山々が一望できた。

茂倉岳、一ノ倉岳、谷川岳、万太郎山、平標山と続く谷川連峰もよく見えていた。

10分ほど休憩して再スタート。

周囲の鮮やかな紅葉を楽しみながら、ゆっくり進む。

木道はとても歩きやすいので助かった。嫁は中ノ芝であんぱんを食べたが、とりあえず問題はなさそうだった。食べられなければ絶対にバテてしまうので、まずはよかった。

早朝から最高の登山日和だったので、下山が遅くなっても苗場山の山頂湿原を見たいと考えていた。

9:25 上ノ芝(2,015m)を通過。

傾斜はそれほどでもないが、とにかくペースはゆっくり。

9:35 小松原分岐に到着。小松原湿原へ向かう道を右に分けて、南西の神楽ヶ峰方面へ向かう。

しばらく平坦な道を進んで、股スリ岩を越える。

股スリ岩の上から神楽ヶ峰へ続く稜線を一望できた。神楽ヶ峰までは、東側の展望がよい快適な道が続く。

天気のよさにテンションが上がり、早く苗場山へと気持ちは勇み立つが、ぐっとこらえてペースを維持する。

田代原(ドラゴンドラ)分岐を過ぎると、神楽ヶ峰はすぐだった。

10:00 神楽ヶ峰に到着。南東側には越後三山、巻機山、燧ヶ岳や至仏山などの山々が並ぶ。手前には田代ロープウェーやドラゴンドラ山頂駅へ至る尾根が延びており、その先にはカッサ湖(田代湖)が見えている。

東側には谷川連峰がずらりと並ぶ。ちなみに神楽ヶ峰という山名は、苗場山を祀るために神楽が奉納されたことに由来する。

南側には上ノ倉山、白砂山、佐武流山などが見えた。

左から浅草岳、八海山、越後駒ヶ岳、真ん中右に中ノ岳、右手前に割引山と巻機山。左手前の尖った山は飯士山(いいじさん)で、隣に見えるのが湯沢町。

左に平ヶ岳、真ん中あたりに燧ヶ岳、その右隣は至仏山。至仏山の前には朝日岳も見える。手前のカッサ湖はカッサダムによって作られた人造湖だが、湖の左側にダムの一部が見える。

左から茂倉岳と一ノ倉岳、オキノ耳とトマノ耳(谷川岳)、オジカ沢ノ頭、万太郎山、仙ノ倉山と平標山。谷川岳の奥には日光白根山も見える。

平標山の右、南東側には、赤城山(真ん中)と子持山(右)も見えた。赤城山の手前は三国山で、左は大源太山。

眺めを楽しみながら神楽ヶ峰でひと休み。このままゆっくり行けば、山頂に立てるだろうと自信が深まってきた。

10:10 神楽ヶ峰を出発。すぐに苗場山が見えてきた。

新潟と長野の県境にそびえる苗場山。神楽ヶ峰側から見ると、広大な高層湿原を有する山には見えない。

苗場山の右、西側には北アルプスや鳥甲山(とりかぶとやま)、妙高連山などが見えた。

妙高山(左)と火打山(右)。

鳥甲山の背後には北アルプスがずらり。左から鹿島槍ヶ岳、五龍岳、唐松岳、鳥甲山の左上に白馬鑓ヶ岳と杓子岳、右上に白馬岳。白馬岳の右隣には高妻山と乙妻山が並んでいる。

富士見坂を鞍部まで140mほど下る。

山頂に向かって登っているハイカーの姿がよく見えた。苗場山のもともとの標高は2,400mほどだったが、大規模な火山噴火によって北側(右手)の山体が崩壊してしまい、現在の高さ(2,145m)になったと云われている。

富士見坂の途中に湧く雷清水。水を汲んでいく登山者がけっこういるようだ。

前泊したと思われる登山者集団や追い抜いていく登山者の数が時間とともに増えてきた。

20分ほどで神楽ヶ峰と苗場山の鞍部に下りてきた。

鞍部のあたりはお花畑と呼ばれ、春から夏にかけて様々な高山植物が咲くという。この辺りの紅葉も見事だった。

いよいよ山頂直下の上りに向かう。鞍部からは250mほどの上り返しとなる。

お腹が減ったと嫁が言うので、上り始める前におにぎりタイム。さすがにアンパンだけではシャリバテしたようだ。

雲尾坂と呼ばれる急坂を上る。

時間はたっぷりあるので、気長にゆっくり上る。

身体が重いという嫁のペースはさらにダウン。後続のハイカーにどんどん抜かされた。

ひと上りして傾斜のゆるいところまで来ると、今度は大きなコブが出てきた。

急坂はまだまだ続く。嫁はハアハアと肺呼吸をするので、フウフウと複式呼吸をしなさいと指導する。

3週間ぶりの登山なので、私も脹ら脛が張ってきた。

背後の大展望と紅葉を楽しみながら上る。北側には左から黒倉山、日蔭山(三ノ山 みつのやま)、霧ノ塔と並ぶ稜線。

北東側には神楽ヶ峰。眼下には上ってきたルートが一望できた。

傾斜がゆるくなると山頂台地はもう近い。

山頂を前にますます失速ぎみの嫁だが、よくここまで頑張りましたよ。

山頂台地に出る手前で、背後の大展望を再び見渡した。黒倉山、日蔭山(三ノ山)、霧ノ塔と並ぶ稜線の向こうには、うっすらと日本海が見えた。港が見えて雲ではなく海だと分かった。

北東の神楽ヶ峰。お花畑付近を歩く登山者が米粒のように見えた。

東側の眼下には清津川の支流である棒沢の谷。その向こうには谷川連峰。

カッサ湖の遙か向こうに燧ヶ岳と至仏山。その手前は朝日岳。左端の平ヶ岳の隣には会津駒ヶ岳も少し頂をのぞかせており、その手前は新潟と群馬の県境にある柄沢山。右端は茂倉岳と一ノ倉。

真ん中奥には日光白根山でその右手前にうっすら武尊山も見える。手前には左から茂倉岳、一ノ倉、オキノ耳、トマノ耳、オジカ沢ノ頭、万太郎山、仙ノ倉山、平標山と続く谷川連峰の主稜線。登った山をずらりと見渡せて嬉しい限り。

11:35 ついに山頂台地に出た。12時までには着きたいと思っていたが、案外少ない休憩でここまで来れた。

広大な山頂台地を覆う草紅葉。右奥に見えるのは、1998年に苗場山頂ヒュッテを全面改装してオープンした苗場山自然体験交流センター。

木道を進むと、高層湿原に点在する池塘が見えてきた。ちなみに苗場山には約1,000個の池塘が存在するらしい。

よく整備された木道が山頂台地の端々まで延びている。風は穏やかで、視界の広がりとともに心も解放されていく。

寒冷多湿の地域では、植物が枯れても分解されないため、枯死体が未分解のまま堆積して泥炭となる。泥炭層が長い年月をかけて周囲よりも高くなると、地下水や周りからの流水では養生されず、雨水や雪のみで維持される高層湿原が形成される。

まずは苗場山自然体験交流センターの手前にある山頂へ向かった。

山頂湿原の西側へ延びる左手の木道。どこを切り取っても風景画になりそうだ。

山頂の少し手前の眺めのよい場所にベンチが設置してあった。ベンチ前で歩いてきた道を振り返った。

11:50 苗場山山頂(2,145m)に到着。朝の段階ではどうなることかと思ったが、山頂に立つことができた。

山頂から苗場山自然体験交流センターの北西側にある見晴し台へ向かった。

笹原の切れた狭い見晴し台に先客が3名。西側が開けているが一番前に出ないと展望は得られないので後ろで待つ。そのうち中年男性が気をきかせて場所を空けてくれた。高齢2名は他の家族が待ち始めても場所を占拠したままおしゃべりを続けていた。

北西方面。左には外輪山を思わせる城壁のような稜線。その手前は高倉山。右手前には黒倉山と日蔭山。その奥には米山と黒姫山がうっすら見えて、さらに向こうは日本海が広がる。

西側をズーム。手前は秋山郷へ至る尾根上の2036mピークと檜ノ塔。その上には鳥甲山。左奥から立山、鹿島槍ヶ岳、剱岳と五龍岳、唐松岳、白馬三山、雪倉岳、朝日岳と北アルプスが続き、右には妙高山と火打山。鳥甲山と北アルプスの間には、飯縄山、戸隠山、高妻山、乙妻山と続く戸隠連峰。

見晴し台から苗場山自然体験交流センターは数分の距離。センター前のベンチでは多くの登山者がくつろいでいた。

次は石碑の前を通って、西側の北アルプスが見える場所へ移動した。

山頂台地をどこまでも木道が延びる。苗場山の高層湿原は、4×2km、周囲約10km、700ヘクタールに及ぶ。

よい感じのところで周囲をじっくり眺め回す。東方面。大きな池塘の先には上越国境の山々。

南方面。龍ノ峰の先には大黒山、上ノ倉山、白砂山、佐武流山と上信越国境の山が並ぶ。

西方面。左の岩菅山の右にずらりと北アルプスの山並が見えた。

北アルプスの南側。左には奥穂高や槍ヶ岳の山容が確認できる。

苗場山に近い分、よりはっきり見える北アルプスの北側。左から爺ヶ岳、立山、鹿島槍ヶ岳、剱岳、五龍岳、唐松岳、白馬三山、雪倉岳。白馬岳と雪倉岳の間に高妻山と乙妻山。

北アルプスの眺めを楽しんでから、自然体験交流センターの方へ引き返した。

センターの近くにある方形型の広いデッキベンチでのんびりすることにした。

デッキやベンチで横になっている人が目についた。それほど混み合ってはいないが、寝ていれば混んできても分からない。

人が集まるから問題が生まれるとボンヤリ思いつつ、靴を脱いでくつろいだ。

おにぎりを食べながら、広大な高層湿原の景観を楽しんだ。こちらは東方面。

龍ノ峰のある南方面。龍ノ峰付近まで散策するつもりでいたが、ひたすらのんびり過ごすことにした。

岩菅山と北アルプスが見える西方面。

東側に見える谷川連峰。いつか谷川岳から平標山までの日帰り主脈縦走にチャレンジしてみたい。万太郎山と日光白根山の間にある武尊山がよく見えるようになってきた。

南側、佐武流山の右奥には浅間山と黒斑山(くろふやま)が見えていた。その右は東と西の篭ノ登山。黒斑山と篭ノ登山の間にはかろうじて蓼科山も確認できた。

結局、デッキベンチで40分ほどのんびりした。

13:00 下山開始。午後になると下山していくハイカーが増えてきた。

後ろ髪引かれる思いで高層湿原の木道を進む。

いつの間にか空には薄雲が広がって、太陽が雲に隠れる時間が増えてきた。

午後になっても上ってくる登山者がけっこういたが、自然体験交流センターの宿泊施設に泊まるのだろう。

大きな池塘の先に龍ノ峰と上信越国境の山を眺める。

復路の上り返しは神楽ヶ峰の手前だけなので、気持ち的には楽だった。

あっという間に山頂台地の西端まで来てしまった。ここからは急坂を下ることになる。

時折足を止めて北東側の広大な眺めを楽しみながら、急坂を慎重に下った。

最初は落ちるような急傾斜が続く。眼下に神楽ヶ峰に続くルートがよく見えた。

雲尾坂をどんどん下る。

上りではあまり目につかなかったが、山腹もよく紅葉していた。

雲尾坂の中程まで下りてきた。疲れを忘れさせるような展望が続く。

上から眺めると鞍部の西側斜面がよく紅葉していた。

下りとなって、嫁の歩調も軽くなった。

鞍部の手前まで来て傾斜がゆるくなった。

鞍部の手前から眺めた神楽ヶ峰。上って行く登山者が小さく見えた。

13:50 お花畑を通過。綺麗な紅葉が目についた。

神楽ヶ峰の上り返しにかかる。途中の雷清水で湧き水を少し飲んでみたが、ミネラルウォーターのように美味しかった。

富士見坂の木段を着実に上る。

山道脇に咲いていたトリカブト。

この日、よく見かけたオヤマリンドウ。

坂を上りきって、14:20 神楽ヶ峰を通過。

神楽ヶ峰を過ぎると平坦で眺めのよい登山路がしばらく続く。

股スリ岩を上る。

14:35 小松原分岐を上ノ芝方面へ向かう。ここからは歩きやすい木段の下りとなる。

14:40 上ノ芝を通過。先行する3人組とほぼ同じペースでしばらく進んだ。

中ノ芝へ向かう途中は鮮やかな紅葉が続く。

14:55 中ノ芝を通過。絶好の休憩地だが、15時近くとなって休んでいる登山者は1名のみだった。

中ノ芝からは樹林帯歩きとなって展望はなくなる。

足元の石が滑るので気をつけて下った。

15:20 下ノ芝で10分ほど休憩。小腹が空いたので、残っていたものを食べてから先へ進んだ。

下りは普段と変わらない快調なペースで歩けた。

樹林帯を抜けて、かぐらスキー場のゲレンデに出た。16:15 和田小屋を通過。

あとはひたすら林道歩き。路肩に止めてあった車もほとんどいなくなっていた。

16:35 駐車場に到着。嫁も無事に登れて本当によかった。