2016年6月18日 土曜日

尾瀬

アヤメ平 1,969 m

 2時15分起床、2時45分出発。戸倉には4時50分到着。さほど待つこともなく、乗合タクシーは5時15分に戸倉を出た。朝から梅雨時とは思えない快晴で日差しは強すぎるくらいだったが、湿原を吹き抜ける風に涼を得て、一日気持ちよく歩くことができた。せっかくの尾瀬なので、尾瀬ヶ原だけではなくアヤメ平と三条ノ滝にも足を延ばしたいと考えていたが、ある程度余裕をもって両方とも回ることができた。アヤメ平ではワタスゲやタテヤマリンドウの群落を見て、尾瀬ヶ原の池塘ではアカハライモリを見ることができた。懸念していた人出もそれほどではなく、木道で渋滞が発生することはなかった。虫がほとんど気にならなかったことも幸いだった。

 帰りもほとんど待つことなく16時半の乗合タクシーに乗って、戸倉には16時55分に到着。帰りの高速は渋滞もなくスムーズに進み、19時20分に帰宅できた。たくさん歩いて足の裏が痛くなったが、初夏の尾瀬を満喫して大満足の一日となった。

登山コースデータ
単純標高差 : 569 m
累積標高差 : 980 m
コース距離 : 26.9 km
標準コースタイム : 11 時間
歩行データ
総歩行時間 : 9 時間 5 分
総行動時間 : 10 時間 40 分

 コースタイム

鳩待峠 5:45 ⇒ 横田代 6:40 ⇒ 7:25 アヤメ平 7:30 ⇒ 7:50 富士見小屋 7:55 ⇒ 土場 8:15 ⇒ 9:15 竜宮十字路 9:25 ⇒ 下田代十字路 9:55 ⇒ 元湯山荘 10:25 ⇒ 平滑ノ滝展望台 10:40 ⇒ 11:10 三条ノ滝展望台 11:25 ⇒ 平滑ノ滝展望台 12:00 ⇒ 元湯山荘 12:15 ⇒ 12:35 分岐 12:40 ⇒ 13:05 東電小屋 13:10 ⇒ 13:25 ヨッピ吊橋 13:30 ⇒ (中田代にてイモリ観察 25分) ⇒ 14:30 牛首分岐 14:35 ⇒ 15:10 山ノ鼻 15:25 ⇒ 鳩待峠

 

4:50 戸倉の第一駐車場に到着。前泊の人が多いのか、すでに半分以上うまっていた。

乗合タクシーはある程度人数が揃った時点で出るのだが、10分も待たずに出発した。

5:35 鳩待峠の少し下が停留所になっていた。ここから1、2分歩くと鳩待峠。

休憩所の前で身仕度を整える。出発の準備をしている人がけっこういた。

5:45 トレッキング開始。アヤメ平へ向かう登山口は、休憩所の裏にあった。

アヤメ平までは約380mの上り。この日も気温が高いようで、上っているうちにすぐ汗をかいた。

山の湿った場所でよく見かけるリュウギンソウ。

スミレは似た種類が多いので確信はないが、ニョイスミレ(ツボスミレ)ではなかろうか。

前夜雨でも降ったのか、木道は濡れていて滑りやすかった。

6:40 樹林帯を抜けて横田代(1,860m)に出た。

ヒメシャクナゲ。かわいらしい小さな花だが、シャクナゲの仲間でれっきとした樹木である。

ワタスゲ。ふわふわの綿帽子が横田代に広がっていた。

横田代に延びる木道は天空に続くかのようで、まばゆい逆光に輝く景観の広がりに思わず目を見張った。

背後には至仏山。雲に隠れていた山頂部も時間とともに見えてきた。

チングルマの群生。

ひっそりと木道脇に咲いていたイワカガミ。

7:15 中原山(1,968.8m)を通過。潅木帯にあり、道標がなければ気づかないような山頂だった。

潅木と熊笹を抜けると壮大なアヤメ平が現れた。

木道の左手に大きな池塘群、前方には燧ヶ岳が見えてきた。横田代からアヤメ平と続く道は天空を歩くようで、その美しさとスケール感はどんな形容も陳腐に思えてしまうほどであった。

池塘ごしに見る至仏山。山頂部を取り巻いていた雲はすっかり消えていた。

東側の眺め。手前の稜線は左が白尾山で真ん中左が荷鞍山、その隣が名前のない1,975mピーク。右奥には日光白根山、錫ヶ岳がうっすら見える。

この湿原に多いキンコウカの葉がアヤメが芽吹く頃の葉に似ていることから、アヤメ平と名付けられたと云われる。アヤメ平は風か強くて、一気に身体が冷えてしまった。

7:25 アヤメ平(1,969m)のベンチでひと休みしてから先へ進んだ。

アヤメ平の道標からは、ゆるやかな下りとなる。

右側が切れ落ちた尾根の端を巻くように進む。

背後に見えるのはアヤメ平。

再び燧岳を正面に見ながらセン沢田代を進む。

一面に群生していたタテヤマリンドウ。

樹林帯を下って 7:45 富士見田代の分岐を通過。

分岐の近くに大きな池塘。燧岳が池の向こうに見える。

そのまま長沢新道へ進むことも考えたが、200mほど先の富士見小屋へ寄ることにした。

7:50 富士見小屋に到着。広々とした場所で、ハイカーが何名が休んでいた。

去年廃館となった富士見小屋。部屋から見える富士山の写真をネット上で何枚か目にした。

立派なトイレもあった。鳩待峠線が開通するまでは尾瀬の表玄関として大変な賑わいだったらしい。

7:55 富士見小屋を出て、分岐まで戻ってきた。

分岐から竜宮十字路までは約580mの下りとなる。泥濘の滑りやすい箇所もあった。

山道脇にたくさん咲いていたゴゼンタチバナ。

下りていく小集団を追い抜いて、上ってくる人と何度かすれ違った。みな山小屋泊まりのようだった。

1箇所だけで目にしたタニウツギ。

9時を回って道が平坦になり、尾瀬ヶ原が見えてきた。

正面に景鶴山(中央)と与作岳(右)を望みながら、竜宮十字路へと延びる木道を進む。四方を山々に囲まれた広大な湿原は、どっちを向いても素晴らしい眺めだった。

西側には至仏山。現在は入山規制中で、例年ゴールデンウィーク明けから7月1日まで入山禁止となるようだ。

竜宮十字路近くの池塘と至仏山。ちなみに「竜宮」とはこのあたりの伏流水を指す言葉で、伏流水の出入り口が竜宮城へつながっているという言い伝えから、あるいは増水時に渦を巻いて水を吸い込む様が竜の口に似ているからとも云われる。

9:15 竜宮十字路に沢山あるベンチで休憩。おにぎりを食べながら、三条ノ滝へ行けるか時間の計算をした。

9:25 下田代十字路へ向かう。尾瀬ヶ原に出ても、人の姿はそれほど多くなかった。

コースタイム通りに歩けば、三条ノ滝まで行ってもバスの最終時刻(5:10)には十分間に合う。アヤメ平を実際に歩いてみて、山と高原地図のコースタイムは甘めと分かったので、写真を撮りながらのんびり歩いた。

竜宮十字路近くの龍宮小屋を通過。小屋の奥に公衆トイレがあった。

小屋を過ぎて沼尻川を渡る。小さな川だが、福島県と群馬県の境となっている。

北東側の燧ヶ岳を眺めながら、広大な尾瀬ヶ原を進む。

龍宮小屋と見晴小屋の中間に位置する六兵衛堀(小川)の周りには壁のように樹林が並んでいた。

六兵衛堀を通過。このあたりはミズバショウとザゼンソウの名所だが、花期は終わっていた。

燧ヶ岳の麓に建物群が見えてきた。木道に人がいなくて気持ちよく歩けた。

南側、アヤメ平方面の眺め。

北西側、景鶴山方面の眺め。

下田代十字路の付近には、思ったよりも多くの小屋が建ち並んでいた。

一番手前の弥四郎小屋。その奥にはテント場がある。

9:55 下田代十字路を通過。実は十字路ではなく、三叉路が2つあって、手前の分岐を左へ進んだ。

下田代十字路から北側の赤田代へ向かう。このあたりは色んな種類の花が咲いていた。

ミツガシワ。水気の多い低層湿原に多く、氷河期の生き残りと考えられている。

ハクサンチドリ。和名は石川県の白山に多く、千鳥の飛ぶ姿に似ていることから。

葉先が丸いので、ムラサキコマノツメと思われる。ニョイスミレの湿原変異型らしい。

ミヤマキンポウゲ。蝋をぬったような光沢があるので分かりやすい。

途中、東電小屋方面への分岐を分けて進む。このあたりが尾瀬ヶ原の最深部にあたる。

サンリンソウ。ニリンソウにそっくりだが、葉柄がある。

赤田代の先に建物が見えてきた。

樹木に大きな蜂の巣を発見。空の巣でよかった。

温泉小屋と元湯山荘が見えてきた。

小屋の手前によれたミズバショウが残っていた。

10:25 元湯山荘を通過。赤田代の名前どおり、鉄分を含んだ赤い源泉が出るらしい。

段吉新道との分岐を分けて平滑ノ滝(ひらなめのたき)展望台へ向かう。

三条ノ滝までは、アップダウンを繰り返してながら200m以上くだる。

10:40 平滑ノ滝展望台に到着。学生の団体で狭い展望台は一杯だったが、間をぬって滝が見える尖端に出た。樹木で全体は見えなかったが、長さ500mに及ぶ花崗岩の一枚岩の上を優雅に滑るように流れるナメ滝が見えた。

平滑ノ滝展望台からは下りが思いのほか長く続く。復路の上り返しが心配になった。

先週大持山でも見たヤマナメクジが、山道の真ん中の岩の上に佇んでいた。

渓流まで下りると、左手に只見川が見えた。平滑ノ滝の近くなので、川まで下りてみたかったが道はなかった。

御池方面へ向かう道との分岐まで上り返して、再び下る。

第2テラスを通過し、さらに急な木段を下った。

11:10 三条ノ滝展望台(第1テラス)に到着。

三条の滝は尾瀬を源流とする只見川の上流にあり、水量が減ってくると三筋に分かれるのが名前の由来と云われる。数日前の情報では滝の水量は例年より少ないとあったが、とてもそうは思えないほど豪快に流れ落ちていた。

第1テラスには4つの休憩ベンチが設置されていた。

11:25 三条ノ滝を出発。最初は急な木段が連続する。

分岐まで上り返して、しばらく下る。泥濘となったドロドロの場所もあった。

再び上り返して、12:00 平滑ノ滝展望台を通過。上りの方が早く感じた。

ツマトリソウ。花びらが7枚の花は珍しいらしい。

平滑ノ滝展望台から少し上ると平坦な木道が続く。

元湯山荘手前の尾瀬ヶ原温泉休憩所。隣の公衆トイレに寄って先へ進んだ。

途中で温泉小屋から出てきた歩荷の方に先を譲った。かなりの荷物が載せられる背負子の高さです。

12:35 赤田代の分岐に到着。5分休憩して、東電小屋方面へ向かった。

分岐で再計算したところ、最終バスの時刻に1時間ほど余裕があると判明したので、さらにのんびり歩いた。

まだ6月なのに咲いていたハナニガナ。

申し分のない天気に気分も晴れ晴れとしていた。

背後の燧ヶ岳。陽が高くなり、山容がくっきり見えるようになった。

12:55 東電尾瀬橋を渡る。

尾瀬の水をすべて合わせて流れる只見川。

湿原をさらに進んで樹林帯に入った。

13:05 東電小屋に到着。

小屋の前にあるベンチで再び休憩した。小屋の向かいには大きな別館もあった。

13:10 東電小屋を後にして、ヨッピ吊橋へ向かう。ヨシッ堀田代に延びる木道が景観の一部となっている。

意外なほど人が少なかったので、自分のペースで気分よく歩くことができた。

何度も立ち止まって写真を撮った。開放感抜群の木道歩きが続く。

尾瀬ヶ原で何度も目にしたリュウキンカ。

レンゲツツジも数カ所で見かけた。

樹木が並ぶ場所には川が流れているので、ヨッピ吊橋が近いと分かった。このような林を「拠水林」と呼ぶらしい。

13:25 ヨッピ吊橋を渡る。

足下のヨッピ川はこの先の下流で沼尻川などと合流し、只見川となる。

ヨッピ吊橋の分岐にあるベンチて少し休憩してから先に進んだ。皇海山でサングラスを紛失したため、この日はサングラス抜きだったが、日差しのキツさに眼球が痛くなってきたので、しばらくの間、嫁のサングラスを拝借した。

ヨッピ吊橋から先の中田代は、木道のそばに池塘が多く、間近に眺めることができた。少し先に歩いていた人が、池塘の中を覗き込んでいた。何かいるのかとよく見てみると、動くものに気が付いた。

水中をゆっくり泳ぐアカハライモリ。しばらく眺めていると、池塘の底を歩くイモリを何匹も発見した。

エゾイトトンボも池塘の周りを飛び交っていた。

アカハライモリを見て、さらに気分は上々。

大きな池塘と燧ヶ岳。たびたび立ち止まっては尾瀬ヶ原らしい眺めを堪能した。

再び池塘に動くものを見つけた。

ゆうゆうと水の中を動くアカハライモリ。

水面に光が反射したりしてピントは全然合わなかったが、何枚かはきちんと撮れていた。

正面の至仏山。

背後の燧ヶ岳。距離的に至仏山と燧ヶ岳の真ん中あたりで、大きさも同じくらいに見えた。

池塘と至仏山。

池塘と燧ヶ岳。

14:30 牛首分岐(中田代三叉路)に到着。鳩待峠に向かうと思われるハイカーが何人も休んでいた。

5分休んで先へ進んだ。前方に見えるのは牛首。

何度もふり返っては尾瀬ヶ原とその先にそびえる燧ヶ岳を眺めた。相変わらず木道は空いていて自分のペースで歩けた。

貴重な冷水性植物のスギナモ(杉菜藻)が、上ノ大堀川にびっしり密集していた。ここからは上田代となる。

再び大きな池塘群が現れた。

水面に頭を出すオゼコオホネ。

イトトンボがとまっていた。

池塘と燧ヶ岳。

モネの睡蓮のようだと思いながら池塘を眺めていると、隣にいたおじさんが「ヒツジグサが咲いているよ」と教えてくれた。旧知の仲であるかのように、ごく自然に話しかけられて一瞬驚いたが、とても感じのよい方だった。

おじさんは、未の刻(午後2時)に開花するからヒツジグサと呼ばれることも教えてくれた。

木道脇に咲いていたカキツバタ。

6月の水不足は尾瀬にも影響して、例年より湿原は乾いていたらしいので、本来ならもっと池塘の水場は広いようだ。

陽が少し落ちてきて、至仏山の方向が時間とともに逆光になってきた。

拠水林を通過する。

樹木があれば小川がある。

山ノ鼻の建物群が見えてきた。

15:10 山乃鼻小屋に到着。靴を脱いでひと休みした。

15:25 山乃鼻小屋を出発。すぐ先に至仏山荘があり、隣にテント場とビジターセンターがあった。

テント場の近くに咲いていたミヤマカラマツ。

しばらくは沢沿いを進む。

前後に人は続いていたが、最後まで木道が混み合うようなことはなかった。

山ノ鼻から鳩待峠までは約200mの上りとなる。後半は木段の上りが続いた。

16:25 鳩待峠に到着。山ノ鼻からのコースタイムは80分となっていたが、普通に歩いて1時間で着いた。

遅い時間だったからか、バスチケットを求める行列はなく、ハイカーの姿は少なかった。

16:30 乗合タクシーに乗って、16:55 戸倉の駐車場に到着。尾瀬を歩きつくして大満足の一日となった。