2018年7月14日 土曜日

白馬岳テント泊 1日目

白馬大池 船越ノ頭

2,380 m   2,612 m

 3連休は晴れの予報が出ていたので、ここ数年来の宿願である白馬岳に登ることにした。前夜20時20分に自宅を出発して蓮華温泉には0時50分に到着。仮眠をとって5時過ぎに登山を開始した。急登はほとんどないものの、石やガレ場の歩きづらい道が続いて体力を奪われた。2ヶ月ぶりの登山ということもあってペースはまったく上がらなかったが、山道脇の高山植物を楽しみながら登山者がまだ少ないうちに白馬大池のテント場に入ることができた。白馬大池のテント場は、周囲にお花畑が広がる素晴しいロケーションだった。

 白馬岳登頂は翌日の予定だったので、テント設営後は高山植物を散策しながら登れるところまでのんびり歩くことにした。小蓮華山まで行くつもりだったが、疲労がかなりあったので、無理はせずに船越ノ頭で引き返した。テント場に戻ってからは大池のサンショウオウを鑑賞して楽しんだ。夕方にはテントがびっしり並んでありえない混雑ぶりとなったが、敷地の端を確保していたので、それほど他のテントは気にならなかった。早めに夕食を済ませて明るいうちに寝てしまった。

登山コースデータ
単純標高差 : 1,142 m
累積標高差 : +1,155 m / -235 m
コース距離 : 6.9 km
標準コースタイム : 4 時間 45 分
歩行データ
総歩行時間 : 6 時間 35 分
総行動時間 : 8 時間 40 分

 コースタイム

蓮華温泉駐車場 5:20 ⇒ 7:45 天狗ノ庭 8:05 ⇒ 9:40 白馬大池テント場 10:40 ⇒ 12:15 船越ノ頭 13:00 ⇒ 白馬大池テント場 14:00

前夜 20:20 自宅出発

深夜の高速を飛ばして松代PAで休憩。狭い林道を20km走って、日付の変わった 0:50 蓮華温泉の駐車場に到着。驚いたことにすでに駐車場は満車。かろうじて駐車場内に停めるスペースを見つけたが、あとの車は路駐するしかない状態だった。そのまま車中で就寝。少し暑かったが、窓を開けると涼しくなった。しばらく寝付けなかったが2時間ほど仮眠をとれた。未明に目が覚めると、身支度を整える登山者や出入りする車で周囲は騒々しかった。

4:00 蓮華温泉 駐車場

入ってきても停める場所がなくて出ていく車が多数あり。夜明け前に出発していくハイカーがたくさんいた。

初日の行程には余裕があるので、ゆっくり身支度をしてから、5:20 駐車場を出発した。

蓮華温泉手前の林道から眺めた西側の峰々。左から雪倉岳、赤男山、朝日岳、五輪山。

蓮華温泉ロッジの裏側から登山道へ。硫黄の匂いがしていた。

秘湯と呼ぶにふさわしい蓮華温泉の野天風呂へと続く道を分けて進む。ザックは重いが、朝からの快晴に心が弾んだ。

ジョウシュウオニアザミ? アザミは種類が多くて同定が難しい。

小さな沢沿いで何度か目にしたオオバミゾホオズキ。

キンポウゲ科のミヤマカラマツ。歩き始めから山道脇にはさまざまな高山植物が咲いていた。

ミズキ科のゴゼンタチバナ。日当たりの悪い山道脇に群生しているのをよく見かけた。

キク科のシロバナニガナ。ニガナの白花変種らしい。

アカネ科のオオバノヨツバムグラだろうか。エゾノヨツバムグラにもよく似ている。

ツツジ科のイチヤクソウ。梅にような花だなと思って写真に収めた。薬草として用いられ、利尿作用などの薬効がある。

傾斜はキツくないものの、大きめの石やガレた岩が多くて、歩きづらい道が続いた。

7:45 眺めのよい天狗ノ庭に到着。テント泊装備の重さがこたえてきたので、小休止することにした。

花なのか分からないまま写真に収めたが、オソバノキソチドリというラン科の高山植物だった。

タカネナデシコの群生。天狗の庭は多様な高山植物に囲まれており、花園のようだった。

ハクサンオミナエシ(コキンレイカ)。白花をオトコエシ(男郎花)、黄花をオミナエシ(女郎花)と呼ぶらしい。

キキョウ科ツリガネニンジン属のヒメシャジン。葉は互生で、よく見ると萼片に鋸歯がある。

バラ科のイワシモツケ。

シュロソウ科のムラサキタカネアオヤギソウ。別名タカネシュロソウ。色がちょっと薄い気もする。

天狗の庭は花に囲まれているだけではなく眺めも抜群。左が小蓮華山で右が雪倉岳。真ん中は鉢ヶ岳。

さらに左から赤男山、朝日岳、平らな長栂山を挟んで五輪山、黒負山(黒倉山)と続く。おにぎりを食べて、20分ほど休憩してから登山を再開した。

キク科のミネウスユキソウ。いろんな種類の花が咲いているので写真を撮るのに忙しかった。

葉は互生して萼片に鋸歯がないように見えるのでミヤマシャジンだろうか?

ツツジ科の落葉小低木、ウラジロヨウラク。

キク科のミヤマアキノキリンソウがもう咲いていた。

イチヤクソウ科のギンリョウソウ。

ツツジ科の落葉小低木、ミヤマホツツジ。雄しべが象の鼻のように長くて曲がっている。

延々と続く花の競演を楽しみながら、一歩ずつ上る。

天狗の庭から15分ほど上ると残雪が現れた。時間とともに嫁の動きが重くなり、徐々に失速してきた。

メギ科のサンカヨウ。フキのような大小2枚の葉の上に白い花をつける。花びらは雨に濡れると透明になる。

ミヤマツボスミレ? 小さくてなかなかピントが合わなかった。

サクラソウ科のツマトリソウ。

バラ科の落葉小低木、ゴヨウイチゴ。つる性で全体に剛毛・棘がある。花は花弁が退化した線状で、葉は掌状複葉で小葉が5枚。

同じバラ科の落葉小低木、ベニバナイチゴ。葉は3出複葉で重鋸歯がある。

ラン科のハクサンチドリ。

クモマスミレにそっくりだが、葉に光沢がないのでキバナノコマノツメかな。

天狗の庭から歩くこと1時間半。やっと樹林帯を抜けて視界が開けた。

9:40 白馬大池テント場

白馬大池のテント場が見えてきた。花を見ながらということもあって、コースタイム3時間のところを4時間かかった。

さっそく設営開始。まだテントはまばらだったので、花畑の前に陣取った。

空気マットを膨らませる。空気が少し薄いせいか、何度も立ち眩みがした。

20分ほどで設営を完了。白馬大池のサイトは平らな場所が多く、ペグがしっかり効いて打ちやすい、ほどよい固さの地面だった。

チングルマの群生。テントの前には見事なお花畑が広がっていた。

タテヤマリンドウとコイワカガミもたくさん咲いていた。

ツツジ科のアオノツガザクラもあちらこちらで群落をつくっていた。

チングルマに混じって咲いていたミツガシワ科のイワイチョウ。

サクラソウ科のハクサンコザクラ。

白馬大池の近くには、ハクサンコザクラのお花畑が広がっていた。

標高2,380mにある白馬大池。空を映した深い青の湖面が鮮やかだった。

時間がたっぷりあったので、10:40 小蓮華山方面へ散策に向かった。

嫁のズボンにくっついてきたカミキリムシを捕獲。

写真を撮ろうと岩の上に置いたら、すぐ飛んで逃げた。開聞岳でも見たゴマダラカミキリかと思ったが、シラフヒゲナガカミキリのようだ。

ひと上りすると平らで広い尾根に出た。前方には船越ノ頭と小蓮華山が見える。

再びハイマツ帯の上りとなる。このあたりは雷鳥坂と呼ばれており、ライチョウがよく見られるらしい。

すでに森林限界を超えているのでどの方角も眺めがよかった。

徐々に高度を上げて白馬大池の全貌がのぞめる場所まできた。明日の日の出はこのあたりで眺めようと考えていた。

船越ノ頭に多くの人がいるのが見えてきたが、小さなアップダウンが続いて身体がやたらと重たかった。

12:15 船越ノ頭

船越ノ頭(2,612m)に到着。

山頂付近に点々と咲いていたクルマユリ。

足元に咲いていたキキョウ科ホタルブクロ属のチシマギキョウ。イワギキョウに似るが、本種は横向きに咲いて、花に白い毛が密集する。

小蓮華山まで行きたかったが、疲労度を考えて今日はここまでとした。ガスが出ていて白馬岳方面は見えなかったが、小蓮華山までの稜線を一望できた。よく見ると小ピークがいくつもありそうだったが、明日はこの稜線を歩くのだと、眺めているうちに気持ちが高まってきた。

船越ノ頭でのんびりしているうちに、北西側にも雲が湧き出てきた。

しばらくすると雲は消えて、再び雪倉岳と朝日岳がよく見えるようになった。

13:00 白馬大池へ下山開始。稜線の東側からガスが上がってきていたが、波打つような稜線が綺麗に見えていた。

黄色い斑点が印象的なミヤマコゴメグサ。小さな花なのでピントが合わずに難儀した。

ガレ場に群生していた高山植物の女王、コマクサ。

上りはとても遠く感じたのに、下りは早く感じた。ライチョウがいないか注意していたが、この日は会えなかった。

上から眺めたテント場の混雑ぶりには驚いた。普段は解放されていない池畔まで、びっしりテントが並んでいる。

14:00 白馬大池

白馬大池のテント場に戻ってきた。

少し休んでから山荘の裏手に回って、白馬大池にいるというサンショウウオ探しをすることにした。

池の水で足を冷やしていると、小さな生き物が水底で動いていることに気が付いた。

尻尾と身体をゆるゆるとくねらせて、とても優雅に泳ぐクロサンショウウオの幼生。あっちに現れたり、こっちに現れたりと、それなりの個体数がいるようだった。

幼生の間はエラ呼吸で、外鰓(がいさい)と呼ばれるふさふさしたエラがある。成体になると肺呼吸と皮膚呼吸となって外鰓もなくなり、陸上生活に移るという。

外鰓のない成体を発見。手の届くところにいたので触ってみると、ぬるりとした感触だった。自分の縄張りがあるのか、いったん遠くに逃げた後でまた戻ってきた。

息継ぎのためか水面に浮き出てきて、すばやく池の底にもぐっていった。

たまに岩に口をつけて、何かを食べている様子も見られた。

近くに場所を移すと、岩の浅い水たまりに小さな幼体を見つけた。オタマジャクシのように頭でっかちで、エラに隠れているのか、前肢はほとんど見えない。

追い込み漁の要領で、小さなクロサンショウウオの幼体を手のひらにすくってみた。柔らかな身体はとても脆弱な感触だった。弱ってしまわないように、写真を撮ったらすぐ逃がしてやった。

15:15 テントへ戻った。

お花畑を眺められるように、端の人は通路としてのスペースを少し開けてテントを張っていたが、その狭いスペースにテントを設営する人も出てきた。我が家のすぐ斜め前にも夫婦の登山者が来て、一声こちらにかけてからテントを張り始めた。あまり歓迎する気持ちになれなかったが、隣のテントの若者が、「張るスペースが見つかってよかったですね」と明るく声をかけていたので心から感服した。相手の身になる想像力、お互いに助け合うという精神、そして現状を楽しむという健全な姿勢。あらゆる意味で勉強になりました。

時間とともにますますテントが増えて、夕方には自分のテントに戻るのも大変になってきたが、隣の若者のおかげでこの状態を苦にする気持ちは消えていた。

西日が当たってテント内が暑いので、豚の角煮とレトルトピラフの夕食後、再び山荘裏の池畔へ。乗鞍岳を映し出す夕暮れ時の大池を眺めながら、いまここにいるという静かな喜びを感じた。この後、テントに戻って19時には寝てしまった。