2022年9月29日 木曜日

北海道旅行6日目 遠征登山4座目

十勝岳

2,077 m

 5時起床。前日は旭山動物園をのんびり散策しながら身体を休めて、夜は望岳台駐車場で車中泊した。この日も朝から晴れていて心も体も軽かったが、登山を開始してから2時間ほどしてガスが出始めた。山頂手前は濃霧で10m先も見えないほどで、登頂後も周囲は真っ白という状態が続いた。

 天候回復をひたすら待って、山頂での滞在が2時間半を過ぎた頃に、やっと霧が晴れて十勝岳山頂の展望を得ることができた。時間の許す限り霧が晴れるのを待つつもりでいたが、霧が晴れていく瞬間の湧き上がるような感動は歓喜と呼ぶにふさわしいものだった。

 下山後は15年前の北海道旅行でも立ち寄った吹上温泉白銀荘で登山の汗を流した。入浴後は道の駅 ひがしかわ道草館へ移動して、翌日の旭岳登山に備えた。

登山コースデータ
単純標高差 : 1147 m
累積標高差 : 1,185 m
コース距離 : 10.2 km
標準コースタイム : 6 時間 55 分
歩行データ
総歩行時間 : 6 時間 40 分
総行動時間 : 9 時間 50 分

※地図をクリックするとルートを引いた国土地理院の地図を参照できます。

 コースタイム

望岳台P 5:35 ⇒ 雲ノ平分岐 6:35 ⇒ 6:50 十勝岳避難小屋 6:55 ⇒ すり鉢火口 8:20 ⇒ 9:30 十勝岳 12:35 ⇒ すり鉢火口 13:30 ⇒ 十勝岳避難小屋 14:25 ⇒ 望岳台P 15:25

5:00 望岳台

出発準備をする登山者がちらほら出てきた。

早朝には北東の方角に、明日登る予定の大雪山が見えていた。

5:35 登山スタート。昨夜は満天の星空で、この日も朝から晴れていた。

南の方角に見えた朝陽に染まる富良野岳。

東側には美瑛富士(左)と美瑛岳(右)。左奥にはトムラウシも見える。

標高の低いところでシラタマノキをよく見かけた。

正面に十勝岳を見ながらゆるやかに上っていく。

同じ時間帯に出発した登山者が何人かいたが、皆さん健脚で歩くのが速かった。

6:35 雲ノ平分岐を通過。美瑛岳側へ向かう登山者もいた。ちなみに美瑛岳と十勝岳を周回すると10時間コースになる。

次に来たときは美瑛岳と美瑛富士に登りたいと思いながら、十勝岳方面へ進んだ。

6:50 十勝岳避難小屋

十勝岳避難小屋に到着。小休止して先へ進んだ。

避難小屋の中。きちんと整理されていた。

前十勝コースは立入禁止となっていた。左の尾根筋にコースを変えて進んだ。

避難小屋からは本格的な上りとなった。

火山らしい岩ゴロの道となり、傾斜が増してきた。

前十勝の火口群。活発に噴煙を上げているのは62-Ⅱ噴火口。水蒸気爆発のような音が聞こえていた。

ガレ場にガンコウランの実がなっていた。

7時23分 稜線の向うに朝陽が登ってきた。

朝から雲ひとつない快晴で、この時点では終日晴れると思っていた。

ジグザクにガレ場を上っていく。

背後の望岳台が遠くなっていく。

西側の麓に見える富良野の町には霧が出ていた。

ガレ場をひたすら登っていくと、正面に十勝岳の山頂部が見えてきた。

上るほどに十勝岳の全貌が見えてきた。

東側に見えた美瑛岳。手前はすり鉢噴火口。

傾斜のゆるくなり、広々とした道に出た。

正面の十勝岳はまだ遠い。

噴火口の間に火山砂礫のルートがのびていた。

左手の北側に見えたすり鉢噴火口。すり鉢火口の手前にあるはずの昭和火口の場所はよく分からなかった。

右手の南側にはグランド噴火口と前十勝。62-Ⅱ噴火口はグランド噴火口の奥向うにある。

火口に囲まれた荒涼とした道が続く。

いつの間にか背後の北西側から雲が迫ってきていた。

あっという間にガスが広がってきた。

8:35 雲と霧に飲み込まれて、あたりは真っ白になった。

視界不良の中を上っていく。目印や踏み跡がしっかりしているので迷う危険性はなかった。

山頂までの距離が分からないまま、岩ガレの急坂をひたすら進む。

時折青空が見えることはあったが、周囲のガスは切れない。

足元だけに集中して上った。

一瞬ガスが切れて、山頂の近くまで来ていることを知った。

すぐにまた真っ白な霧に覆われた。

おぼろに人影が見えて、そこが山頂だと分かった。

9:30 十勝岳 (標高 2,077m)

山頂に到着。道標にカメラを載せてタイマー撮影した。

とりあえず腹ごしらえをした。

自分でも信じがたいことだが、山頂でナキウサギを見た(と思う)。すぐ数メートル先で2度も見かけたので、まず間違いないと思う。小さなネズミほどのサイズだったが、すぐ岩の隙間に逃げてしまったので写真を撮る時間はなかった。私以外は誰も気づいていないようだったので、証拠となる写真を撮っておきたかったのだが…。何か違う小動物だった可能性もあるが、真相は分からないままとなってしまった。

時間はあるので、天候の回復を待つことにした。

ガスが薄くなって山影が見えてくると、皆一斉にカメラや携帯を向けるが、あっという間にガスってしまう。

12時近くになると、次々と登山者が下山していき、しまいには私と妻だけが山頂に残された。次はいつ登れるか分からないので、時間の許す限り山頂で待つことに決め、妻には「最悪14時まで待つ」と宣言した。

北西からの強い風が冷たくて、身体の芯から冷えた。

たまに顔を出す太陽を背にして立つと、西側の霧にブロッケン現象が見られた。

12:15 霧がみるみる晴れてきた。

また霧に覆われるのではないかと半信半疑だったが、周囲の霧が一気に晴れてきた。

まさに感無量。3時間近くも山頂で待った甲斐があった。

北東側の眼下には火山砂礫の台地が広がっていた。その向こうに石狩岳などの山並みが見えた。

雲に隠れていたトムラウシ山も現れた。

上ってきたルートが眼下に見えてきた。

北西方面には前十勝の火口群も見えた。

南西方面の富良野岳は依然として雲の中だった。

山頂標で写真を撮り直した。次はいつ来られるか分からないので、霧が晴れた時の喜びには格別のものがあった。何に対してかよく分からないが、感謝の気持ちで一杯になった。

しばらく眺めを楽しんで、12:35 下山開始。

上りは霧で回りが見えなかったので、こんなところを上ったのかと思いながら下った。

下り始めてすぐに過去になかったような転び方をして、自分でもびっくりした。山頂で身体が冷え切っていたためか、足が滑って転んでしまった。山頂に向かっていた登山者が、遠くから「大丈夫ですかーっ」と声をかけてきたくらいだから、かなり派手に転んだのだろう。右膝を擦りむいて、ついた手が痛くなったくらいで済んだが、場所が違っていたら危なかった。転んでしばらくの間は、意識的にゆっくり慎重に歩いた。山頂の天気が一変して写真を撮ろうと動いた際に、妙にふらふらすると感じたことを思い出したが、その時に身体が冷えてうまく動かないことに気づくべきだった。1つ大きな教訓を得た。

前十勝周辺の火口を眼下に見ながら下る。

火山特有の異質な景観の広がりに、何度も足を止めて見入ってしまった。

雲に隠れていた美瑛岳が現れた。右奥はトムラウシ山。

これほど広範囲に草木がない山は記憶にないが、草木が生えないくらい噴火が頻繁にあるということだろう。

振り返って見た十勝岳山頂部。

12:50 現在は立入禁止の前十勝コースとの合流点を通過。

徐々に小さくなる十勝岳山頂部。

さらに下る。

火山特有の荒々しい景観が続く。

前十勝のグランド火口が近づいてきた。

火口群に囲まれた平坦な稜線台地まで降りてきた。

遠くなる十勝岳の山頂。上りではこの辺りから霧で何も見えなかった。

広々とした稜線台地をのんびり歩く。

稜線台地の荒涼とした景観。

米国ユタ州のナショナル・パークを思い出したが、日本とは思えない情景が続く。

吹きあがる噴煙。時折「ドドン」と重たい音を響かせていた。

何度も足を止めて、遠ざかる十勝岳を眺めた。

稜線とは思えない広さなので、濃霧が出たら道に迷ってしまいそうだ。

周囲の景観が素晴らしいので、下るのがもったいないような気がしていた。

すり鉢噴火口。

時折、稜線上を霧が流れていく。

稜線台地からガレの下りとなった。

十勝岳避難小屋の手前で再び霧が出てきた。

14:25 十勝岳避難小屋

十勝岳避難小屋を通過。

雲ノ平まで降りてきた。

14:50 雲ノ平分岐を通過。

望岳台の近くまで来ると、ナキウサギの声が頻繁に聞こえてきた。ナキウサギの写真を狙っている観光客の姿もあり、「そこにいる !」などと声も聞こえてきた。

ナキウサギを見に行ってみようかとも一瞬思ったが、望遠レンズがないとクリアな写真は撮れないだろうと思い、疲れもあったのでそのまま下山した。

エゾオヤマリンドウがまだ残っていた。

15:25 望岳台の駐車場に到着。山頂での待ち時間も含めて、忘れ難い山行になった。

下山後は吹上温泉白銀荘で登山の汗を流した。