2017年5月20日 土曜日

燕岳

2,763 m

 0時20分起床、0時55分出発。助手席で眠る嫁を尻目に夜の高速をひた走り、4時25分、中房登山口の第2駐車場にギリギリ停めることができた。第三ベンチからは残雪の道となり、思った以上の積雪だったが、危険箇所はなく、踏み抜きもほとんどなかった。燕山荘からは北アルプスらしい大展望の稜線歩きとなり、360度の眺めを満喫した。登山者は多かったが、大所帯の団体はおらず、狭い山頂でも快適に過ごすことができた。雷鳥も最後に出てきてくれて、至近距離から冬羽の残る雄を見ることができた。

 下りではジャリジャリのくされ雪に苦戦したものの、適当な区間毎にベンチが用意されているので、うまく休憩を挟みながら下山することができた。帰りの県道327号は狭い道が続くので運転に神経を使ったが、高速はまったく渋滞がなく、不思議と睡魔に襲われることもなかった。結局PAで休むこともなく、4時間弱の運転で19時過ぎに帰宅。懸念材料は多々あったが、終わってみれば全てがうまく回って、大満足の北アルプス登山となった。

登山コースデータ
単純標高差 : 1,373 m
累積標高差 : 1,520 m
コース距離 : 11.5 km
標準コースタイム : 8 時間 25 分
歩行データ
総歩行時間 : 7 時間 45 分
総行動時間 : 10 時間 20 分

 コースタイム

第2駐車場 4:50 ⇒ 5:05 中房登山口 5:10 ⇒ 6:10 第二ベンチ 6:15 ⇒ 7:25 富士見ベンチ 7:30 ⇒ 8:00 合戦小屋 8:10 ⇒ 9:30 燕山荘 9:40 ⇒ 10:10 燕岳 11:05 ⇒ (雷鳥撮影10分) ⇒ 11:45 燕山荘 12:00 ⇒ 12:40 合戦小屋 12:55 ⇒ 13:35 第三ベンチ 13:40 ⇒ 14:00 第二ベンチ 14:10 ⇒ 14:25 第一ベンチ 14:30 ⇒ 14:55 中房登山口 15:00 ⇒ 第2駐車場 15:10

 

4:25 第2Pに到着。最後の1台だったようで、後続車は第3Pへ向かうか無理やり路駐していた。

4:50 駐車場を出発。中房登山口までは林道を歩く。

5:05 中房登山口(1,462m)に到着。登山口には中房温泉があり、トイレも完備されていた。

最初から九十九折りの急登が続く。

登り始めは身体が重たい。体調を確かめながらゆっくり上る。

中房川が流れる谷間の向こうに東餓鬼岳が見えていた。

5:45 第一ベンチを通過。早出した登山者の姿がちらほらあったが、思ったよりも少ないと感じた。

6時ちょっと前に朝陽が差し込んできた。

荷揚げ用のケーブルを過ぎると第二ベンチはすぐだった。

6:10 第二ベンチに到着。アンパンを食べて休憩した。

まだまだ上りは続く。

途中から残雪がでてきた。

6:45 第三ベンチを通過。距離的にはここで半分。一定区間ごとに道標が設置してあるので、現在地を常に把握できた。

途中で東側の樹間に八ヶ岳が見えた。真ん中あたりに蓼科山、右には南八ヶ岳の赤岳、阿弥陀岳、権現岳、編笠山が並ぶ。蓼科山の左手前は美ヶ原。

第三ベンチからは雪が増え始めたが、ジャリジャリの腐れ雪で歩きづらかった。

7:25 富士見ベンチに到着。南東側に富士山が見えた。その右には南アルプスの甲斐駒ヶ岳と北岳も見える。この後富士山は、徐々に霞んで見えなくなった。

残雪の道が続くようになったので、チェーンスパイクを装着。

グリップが増して歩きやすくなった。

樹林帯を抜けるとすっかり雪山の様相。雪の多さに驚いた。

8:00 合戦小屋(2,350m)に到着。小屋は半分ほど雪に埋もれた状態だった。

合戦小屋のテーブルベンチで10分ほど休憩。小腹が空いたので再びアンパンを食べた。

8:10 登山再開。ここから燕山荘までは雪の急坂が続いて、けっこうキツかった。

合戦尾根の左手には常念岳、東天井岳、大天井岳と、常念山脈の南の山々ずらりと並ぶ。

常念山脈の稜線上、大天井岳の右には槍の穂先がのぞくようになってきた。

嫁は雪の急登にかなり苦戦。合戦小屋まではよいペースできたが、ここで失速。

雪原は強烈な照り返しで、サングラスを掛けていなければ、すぐ雪目になりそうだった。

合戦尾根の右手、北側には餓鬼岳と東餓鬼岳。その右奥には妙高連山が見えていた。

ひと山越えて燕岳の山頂部と燕山荘が見えてきた。燕山荘までは近そうに見えたのでコースタイムほどかからないと思ったが、小ピークが続いて見た目よりも遠かった。

標高が上がって、槍ヶ岳の左に大喰岳と中岳も見えるようになった。

ジャリジャリの雪だが、それほど踏み抜き跡はなかった。合戦尾根の上りはまだ続く。

もうひと山越えたので近くに山荘が見えると思ったら、まだ遠くてがっかり。

山稜の上には紺碧の空が広がり、ほとんど完全な無風。絵に描いたような登山日和で、コース上のどこかにあると覚悟していた踏み抜き地獄もほとんどなかった。

ついに燕山荘のすぐ下までやってきた。いよいよ来たと嬉しくなって、ほとんど疲れは感じなかった。

直下の階段を上る。北アルプスの山荘だけあって、近づくとその大きさが分かる。

燕山荘の南西側に出ると、親切なおじさんハイカーが、背景を変えて何枚も写真を撮ってくれた。

燕山荘の正面玄関は北側にあり、もう少し上る。稜線からの眺望がただもう素晴らしくて、北アルプスの雄大さを実感した。

9:30 燕山荘(2,704m)のフロントに到着。新しく塗装したのか真新しく見えた。チェーンスパイクを外して、ひと休みした。

南西方向。左から大天井岳、奥穂高岳、南岳、中岳、大喰岳、槍ヶ岳、笠ヶ岳、右端に樅沢岳(もみさわだけ)。

西方向には、左端から樅沢岳、双六岳、三俣蓮華岳、黒部五郎岳、鷲羽岳、ワリモ岳、真ん中右に水晶岳、野口五郎岳、右端に三ッ岳と北アルプスの山がずらり。

北方向には燕岳。その左奥には立山連峰。右奥には鹿島槍ヶ岳と白馬岳なども見えた。

燕山荘の北側稜線には雪に覆われたテント場があった。遙か右奥に見えるのは妙高連山。

東方面。手前は東餓鬼岳から清水岳、有明山と続く稜線。その向こうには四阿山と浅間山が幽かに見える。

浅間山のアップ。

南東方面。八ヶ岳と南アルプスは幽かに見えていたが、富士山は見えなくなっていた。

山荘前の方位盤。

近くには石のオブジェもあった。

燕山荘からの眺めは文句なしに素晴らしい。北アルプスのほぼ真ん中にあるので、名だたる名峰を一望できる。

ひと休みして、9:40 燕岳へ向かった。

登山口から4時間ちょっとで北アルプスのほとんどの山を一望できる稜線に出られて、その近くには山小屋とテント場があるのだから、燕岳が多くのハイカーで賑わうのもうなずける。

稜線に出ても風はほとんどなかった。

砂礫の道を進む。稜線の雰囲気が、同じ花崗岩でできた鳳凰三山にとてもよく似ていた。

かの有名なイルカ岩。誰かが削ったかのように、目もきちんとあった。

形容しようのない圧倒的スケールの大パノラマ。北アルプスの素晴らしさをこの稜線歩きで再認識した。

イルカ岩の他にも屹立する花崗岩がたくさん見られた。

稜線のアップダウンはゆるやかで、これぞ北アルプスといった大展望を楽しみながら、悠々と歩くことができる。

稜線上は雪がほとんどなかったので、東側斜面に見える雪に雷鳥がいないか注意しながら歩いた。

燕岳の花崗岩は粒子が粗くてザラメのようだった。登山靴を傷つけないよう足運びに注意した。

燕岳山頂部の岩塊が近づいてきた。

左側はメガネ岩で、真ん中奥の岩峰が燕岳山頂。近づくと巨大な花崗岩の塊であることが分かる。

最後は岩峰の東側を巻いて上る。

背後には美しい常念山脈の稜線が延びていた。

山頂直下の急登を上る。気持ちが急いてどんどん先に進んだ。

やはり北アルプスは違う。北岳山荘で出会ったおじいさんの言葉を思い出した。

10:10 山頂に到着。先客は数えるほどで、待つことなく狭い山頂に立つことができた。

人が少ないうちに記念撮影。

山頂の数m下の岩場でおにぎりを食べた。快晴、無風の大展望。まさに至福の時間を過ごした。

歩いてきた稜線はそのまま大天井岳まで続き、さらに東天井岳、常念岳、前常念岳と逆S字を描いて延びていた。

南西方面。左から大天井岳、奥穂高岳、南岳、中岳、大喰岳、槍ヶ岳、笠ヶ岳、樅沢岳、双六岳。

2012年に縦走した槍ヶ岳から前穂高岳までの稜線がよく見えた。北穂高と奥穂高が重なっているので大キレットは見えない。

西方面。左から黒部五郎岳、鷲羽岳、ワリモ岳、水晶岳、真ん中右に野口五郎岳、右に三ッ岳。

北方面。左から鳶山、鷲岳、龍王岳、立山、剱岳、真ん中に針ノ木岳、さらに蓮華岳、白馬岳、鹿島槍ヶ岳まで見える。手前は北燕岳へと続く稜線。

龍王岳、立山、剱岳、針ノ木岳のアップ。

旭岳、白馬岳、鹿島槍ヶ岳のアップ。左端は蓮華岳。

北東方面。手前は餓鬼岳から東餓鬼岳、清水岳と続く稜線。左奥には妙高連山。右奥には上信越の山々。

左手前の餓鬼岳の上に雨飾山、右に焼山、火打山、妙高山、高妻山と並び、右端には御巣鷹山と黒姫山もうっすら見える。

東方面。有明山の向こうに安曇野の市街地。美ヶ原や八ヶ岳、南アルプスはうっすら見える程度だった。

これほどの眺めを見てしまったら、他の山域へは行きたくなくなる。それくらい圧倒的な眺望だった。

南側、大天井岳の右には槍ヶ岳まで続く東鎌尾根もよく見えた。

どこからでもすぐ分かる槍ヶ岳の尖峰。あの穂先に登ったことが信じがたく思えた。

11:05 燕山荘へ戻る。瞬く間に1時間近くが経過していた。

空身で上ってくる人を何度も見かけた。アタックザックなら北燕岳まで行けたかもしれないと一瞬思うが、欲張る必要はないと思い直した。

圧倒的な絶景に何度も足を止めた。これで雷鳥を見られたら言うことなしだと嫁に話していた。

メガネ岩。岩に登っている画像をネット上で目にしたが、ロープが張られて岩登りは禁止されていた。

砂礫の道は花崗岩の表面がはがれてできているので、ざらざらでとても固い。

飛騨山脈を北アルプス、赤石山脈を南アルプス、木曽山脈を中央アルプスとそれぞれ形容することに、ひっかかりを感じることもあるのだが、雪山の絶景を眺めているとアルプスと呼びたくなるのも分かる気がした。

巨大な花崗岩の西側を巻いて進む。

雪の上に雷鳥がいないか注意しながら歩いていた。

ハイマツを越えると左手の東側斜面に残雪が見えたので、砂礫の山を少し登って雪上を眺めようとしたところ、目の前を雷鳥が飛んでいった。岩陰に見失ったが、50mほど戻った地点の男性2人が何かを見つけたようなので、ザックを置いて引き返した。

私が砂礫の上から雷鳥を探している間に、嫁も別の雷鳥が飛んでいくのを見かけたようで、2人して男性登山者のいるところへ急いだ。近づいてみると男性登山者の目の前に雷鳥がいた。

冬羽を残した雷鳥の雄。近くに人がいても微動だにしない。写真撮影が終わるのを待っていたかのように、撮れたと思った瞬間に飛び去った。この雷鳥の出現は思いがけない僥倖だった。

何も思い残すことがなくなり、意気揚々と先へ進んだ。

イルカ岩で何度も写真を撮り直しているカップルがいた。

燕山荘が徐々に近づく。復路は速く感じた。

11:45 燕山荘に戻ってきた。登山者の数がずいぶん増えていた。

空いているテーブルがなかったので、大きな道標の近くに腰を下ろしてひと休み。

12:00 チェーンスパイクを装着して下山開始。大満足である一方、下山するのが名残惜しい。これだけの大展望を日帰りするのはやはりもったいないわけで、北アルプスは絶対に泊まりで来るべきだと感じた。

合戦尾根を一望する。ここからはひたすら下る。

正午を過ぎて雪がますます緩んできた。グリップがきかない。

強烈な照り返しの中を下る。ズルズル滑る雪上歩行で、徐々に膝が疲れてきた。

尻セードで下る若者たちもいたが、確かに滑った方が断然早いと思える下りだった。

ミニスキーの要領で、バランスを取りながら登山靴を滑らせて下った。12:40 嫁より先に合戦小屋に到着。

合戦小屋周辺は登山者が大勢いたが、たまたまテーブルベンチが空いたので、座ってひと休みした。

夏はスイカで有名だが、さすがにスイカを食べている人は見あたらなかった。12:55 合戦小屋を後にした。

樹林帯に入っても、まだまだ雪の下りは続いた。

どんどん下って、13:15 富士見ベンチを通過。

雪解け水で山道が水溜まりになっている箇所も出てきた。#

13:35 第三ベンチでチェーンスパイクを外す。疲れがたまってきたので、ベンチの存在が有り難かった。

よく上ったと思えるほど、長々と下りが続いた。

14:00 第二ベンチで10分休憩。下るほどに気温の高さも感じるようになってきた。

さらに下って、14:25 第一ベンチでも5分休憩。下りに強い嫁とは対照的に、最後は私の方がへばっていた。

九十九折りに下っていくと、足元の樹間に赤い屋根が見えてきた。

14:55 中房登山口に到着。登山口の中房温泉で疲れを癒やしていく登山者もいるようだった。

ここまでくると着いたも同然だが、次は帰りの運転のことが頭をよぎり始めた。

第1駐車場には空きスペースができ始めていた。

第2駐車場は橋を挟んだすぐ先にある。

駐車場の前後に無理やり路駐している車が並んでいた。

15:10 駐車場に到着。帰りの県道でサルをたくさん見かけた。