2012年8月27日 月曜日
槍・穂高縦走登山 1日目
槍ヶ岳
3,180 m

|
||||||||
|
コースタイム
上高地バスターミナル 5:20 ⇒ 明神館 6:10 ⇒ 徳沢ロッヂ 7:00 ⇒ 8:00 横尾山荘 8:10 ⇒ 9:30 槍沢ロッヂ 9:45 ⇒ ババ平キャンプ場 10:15 ⇒ 大曲 10:35 ⇒ 11:40 天狗原分岐 11:50 ⇒ 坊主岩小屋 12:55 ⇒ (5分休憩) ⇒ 殺生分岐 13:35 ⇒ 14:15 槍ヶ岳山荘 14:20 ⇒ 14:45 槍ヶ岳 15:50 ⇒ 槍ヶ岳山荘 16:10
5:10 上高地観光センター

バスターミナルのある上高地観光センターに到着。隣にはインフォメーションセンターもあった。沢渡からのタクシー代は定額4,000円也。

広場にテーブルベンチが設置されていて水場もあった。車に昼食用のおにぎりを置き忘れたので、売店を物色するがお土産ばかりだった。

河童橋を通過。

舗装された道がしばらく続いた。

立派なトイレやテント場などを通り過ぎる。

梓川の左岸につけられた平坦な遊歩道を歩いていると、時折 樹林帯がきれて、梓川の対岸に明神岳が見えた。尖頭は2263mの無名峰で雲のかかった右側が第5峰。

6:10 明神館を通過。そのまま徳沢へ向かう。

足の速いハイカーに何組か抜かされた。平日の早朝でもけっこう人がいた。

キク科のイワギク。

背景は徳沢ロッヂの少し手前から見た明神岳と前穂高岳。左から明神岳の第5峰、第4峰、小さく第3峰と2峰、ほぼ真ん中に主峰、少し空いて右に前穂高岳。主峰の手前は長七ノ頭で、前穂高岳の右が茶臼ノ頭。

梓川の河原に出て周囲の眺めを楽しんだ。北側には大天井岳(左)と中山(右)が見えた。

7:00 徳沢ロッヂを通過。

徳沢キャンプ場は、テントが沢山張られて大盛況。

26日からヤマケイの涸沢フェスティバルが開かれているらしく、それも人出の多さにつながっているようだ。

徳沢からしばらく進むと、下生えで複数の野生猿が何かを食べていた。

7:20 新村橋の横を通過。涸沢へ続くパノラマコースは、この橋を渡って行く。

広々とした梓川。ここなら丸一日河原遊びを楽しめそうだ。

樹林帯の平坦な道が延々続く。

キキョウ科のヤマホタルプクロ。

梓川左岸につけられた道を散策するだけでも、十分楽しめそうだ。

黙々と歩き続け、8:00 涸沢との分岐となる横尾山荘に到着。ここで小休止することにした。

本谷橋の向こうは屏風ノ頭、左奥は前穂高岳。嫁が石井スポーツの方に、「靴の履き心地はどうか」と話しかけられた。嫁の靴は石井スポーツが扱うAKUだが、さすがに目ざとい。

真新しい横尾山荘。2008年にリニューアルしたらしい。眺めもよくて、とても雰囲気のよい場所だった。

8:10 横尾山荘を出発。梓川左岸の道はまだ続く。

横尾を過ぎてからは起伏が出て道幅も狭くなり、登山道らしくなってきた。

一ノ俣に架かる橋を渡る。道標のあるスペースでおじさんハイカーが数名休んでいた。

槍沢の清流を眺めながら歩くのは気持ちよかった。

二ノ俣の橋も渡り、さらに沢沿いの道が続く。

清流の澄んだ水が輝いていた。

ナデシコ科のセンジュガンピ。

槍沢ロッヂの手前まで来た。

9:30 槍沢ロッヂに到着。ここまで4時間ちょっと、ほとんど平坦な道といえども疲れを感じてきた。

樹林帯を抜けて、10:15 ババ平に到着。石堤が残る旧槍沢小屋跡地はテン場となっている。

雪渓に空洞ができており、ぽっかり空いた穴から流れる水の音が聞こえていた。

ルート上の雪渓はしっかりしていたので、踏み抜きの心配はなさそうだった。

周囲の景観を楽しみながらU字谷を進む。槍沢ロッヂで一緒になったバラけて進む外人一行と、殺生ヒュッテあたりまで抜きつ抜かれつした。

10:35 大曲りを通過。このあたりから傾斜が徐々にキツくなってきた。まだ1,000m以上登らなければならない。

フウロソウ科のハクサンフウロ。

後ろにいた外人の話し声がよく聞こえた。太っているのに健脚のようで、ずっとついて来ていた。

正面には大喰岳から中岳に続く稜線が見えるが、槍の穂先はまだ見えない。

セリ科のミヤマシシウド。

キンポウゲ科のミヤマトリカブト。

振り返ると渓谷の向こうに台形型の赤沢山が見えた。

11:40 天狗原分岐に到着。

天狗原方面の雪渓に、猿の群れがいた。

上りとなって、前半の道のりで足が疲れていることを認識。ここからが踏ん張りどころと気合を入れ直す。

岩屑のガレた道をジグザグに上って行く。

シソ科のミソガワソウ。


グリーンバンドと呼ばれるモレーン台地から、やっと槍ヶ岳が見えてきた。

U字谷の奥にそびえる槍ヶ岳を仰ぎ見る。正直まだあんなに遠いのかと感じざるを得なかったが、槍の穂先が見えたという喜びは大きかった。

槍の穂先。ほれぼれするような尖頭は神々しいとさえ言える。

嫁もかなりグロッキー。水分補給をして一息入れる。

槍ヶ岳を仰ぎ見ながら先へ進む。

徐々に高度が上がって、赤沢山の上に常念岳の頭が見えてきた。

額に入れて飾りたくなる景色が続き、槍の穂先に登るのだと思いつつ、一歩一歩先へ進んだ。

岩ガレをひたすら上るが、槍は全然近づかない。

ヒュッテ大槍との分岐を通過。

常念岳の姿が大きくなっていくことで、高度が上がっていることを確認。

12:55 坊主岩に到着。1828年に槍ヶ岳を開山した播隆上人が、ここでビバーグしたと言われている。

縮まらない距離感が精神的にキツイ。

キク科のクロトウヒレン。

坊主岩から20分ほど上ったところで小休憩。昼食代わりに菓子パンを食べた。山頂が見えたらもう近いというのが登山におけるいつもの感覚だが、槍ヶ岳の上りはまったく違って見えてからが遠かった。

殺生ヒュッテと並ぶ高さまでやっとたどり着いた。この時点で、かなりへばっていた。

13:35 殺生分岐を通過して、さらに上へ。

殺生分岐を過ぎると、山荘のある肩まで最後の急登となる。頑張って上るが、やはり近づいている気がしない。

大きなジグザグの上りになると、角度が変わってやっと視覚的に槍が近づいてきた。

常念岳もかなり見えるようになってきた。常念岳の右下はヒュッテ大槍。

穂先の見え方が変わって近づいていることが明確になってくると、精神的に全然違う。

振り返ると殺生ヒッュテが眼下に遠のいていた。

前には10人以上の団体がおり、彼らよりも先に槍の穂先にとりつきたいと焦るが、身体がついていかない。

団体に追いつけないまま、14:15 槍ヶ岳山荘(標高3,080m)に到着。

すぐにリュックをデポして、そのまま槍の穂先へ登る準備をした。

出発前に先行していた大所帯が今日は穂先に登らないと耳にした。渋滞と混雑は避けられると一安心。

槍の肩から上り下りするハイカーを眺めると、スゴイところに取りついているように見えた。ちょうど団体が降りて来たところで、肩まで降りてきた方に、「いまなら山頂は空いているよ」と声を掛けられた。

いざ、槍の穂先へ向かう。

リュックはないし、いよいよ来たという期待感で身体は軽かった。

最初の長い鉄梯子を上る。鉄梯子はひじょうにしっかりしていて、上っていてまったく不安を感じなかった。

足場はしっかりしているし、登るべきルートに印があるので、迷うことなく進める。

梯子と鎖が連続するが、慎重に上れば危険はない。嫁もすいすい上って行く。

山頂直下には上り専用の鉄梯子が2本連続する。まずはひとつ目。

最後の長い鉄梯子を登る。山頂に出た嫁がVサインを出していた。

14:45 ついに槍ヶ岳山頂に到着。

本当に登れてしまった。まさに感無量の夢心地。

山頂標のある祠側は逆光ぎみだったが、親切な女性がせっかくだからと、露出補正しながらきちんと写るようにと何枚も撮ってくれた。

北側の眺め。右の三角は北鎌尾根の独標(2,899m)、真ん中の稜線は硫黄尾根と硫黄岳。左奥は水晶岳で、その右の立山と剣岳がかろうじて見えており、右奥の白馬三山には雲がかかっていた。

北東側。左に唐沢岳、ほぼ真ん中に燕岳、右に大天井岳。手前は独標。

東側の眺め。左から大天井岳、東大天井岳、横通岳、そして常念岳と続く。手前は赤岩岳、西岳、赤沢山と続く稜線で、西岳から右手前に東鎌尾根が延びている。

3週間前に登った常念岳。

東鎌尾根の上に見える赤い屋根はヒュッテ大槍。

東鎌尾根の右、南東側には殺生ヒュッテと登ってきたU字谷の槍沢ルートが一望できる。

南側には、明日歩く予定の槍ヶ岳山荘から大喰岳、中岳、南岳、北穂高岳と続く稜線が一望できた。前穂高は見えたが、奥穂高は雲の中。

眼下には槍ヶ岳山荘。山荘というより、もはやホテル並みの規模であることが分かる。

北鎌尾根の独標。

「アルプス一万尺」で歌われた小槍。山頂から見ると小さく見えるが、クライマーが登っている写真などを見ると巨大な岩峰だと分かる。

嫁はゆったり感慨に浸っているようだった。

ひと通り写真を撮り終えて靴ひもを緩めようとすると、両ももの大腿内転筋がすぐ攣りそうになるので難儀した。

30分ほどすると若者集団が登ってきて、山頂は少しにぎやかに。

入れ替わるハイカーを尻目に、我々はのんびり山頂で過ごした。

山頂でくつろいでいるうちに、北側のガスが引いて、涸沢岳と奥穂高岳も見えてきた。

鉄梯子のある一般ルートではなく、北鎌尾根の独標側から登ってくる登山者が数名いた。

15:50 いつまでも山頂にいたかったが、宿泊の手続きもあるので下山開始。

下りの方が危険なので、より慎重に降りる。

嫁はちょっと危険なくらいのスピードでどんどん下っていく。

前後が空いていたので自分のペースで下れた。混んでいないのは幸いだった。

気の抜けない下りが最後まで続く。

山頂でのんびり休んだので疲れを感じることもなく、約20分で槍の肩まで降りた。

下山後は槍ヶ岳山荘の混み具合が気になってきた。

すぐに宿泊の手続きをした。1泊2食弁当付で1人1万円。簡易個室利用で計24千円。

部屋で一休みしてから、夕食まで外の眺めを楽しんだ。

山荘の南側にあるテント場をのぞいてみた。ここまでテントを担いでくるのは大変だが、忘れられない体験になるだろう。

肩から眺めた槍ヶ岳。17時を回ると少しガスが出てきた。

17:40 大きな食堂で夕食を頂く。17時から最初のグループが食事を開始。我々は第2グループ。

献立は酢豚、ポテトサラダ、味噌汁など。山では贅沢は言えないので、まあ十分かなという感じ。

夕食後、夕映えの空を期待して待つが、西側に厚い積雲が出張っていて、太陽は隠れっぱなし。ますます積雲が発達して、結局夕焼けはなし。簡易個室はプライベートが保ててよかったが、布団が少し湿っているのが気になった。明日の準備を整えて、消灯時間(20:30)の前に横になった。
0時半起床、0時55分出発。沢渡(さわんど)の市営第2駐車場には4時20分過ぎに到着。身支度を整えてタクシーで上高地へ移動した。釜トンネルの開門時間(5時)を10分ほど待ち、上高地ビジターセンター前には5時10分に到着した。
平坦な道が横尾山荘まで延々と続いたが、これがボディーブローのように疲労を蓄積させていると、後半の上りになって気づかされた。槍沢ロッヂを過ぎてからの上りの長さについては十分覚悟をしていたものの、本当に長くて疲労困憊した。特に、槍ヶ岳が見えてからの長さは聞きしに勝るもので、なかなか近づかないので精神的にも疲弊した。ガスが出ていたら翌朝登るつもりでいたが、くっきり晴れていたのでその日のうちに槍ヶ岳山頂へ。山頂直下の長い梯子を上り終え、天を衝く槍の穂先に出た瞬間の喜びは、まさに感無量と呼べるものだった。雲の張り出した西側以外は素晴らしい展望が広がっており、満ち足りた充実感の中で至福の時間を過ごした。山頂は狭かったが、上ってくるハイカーは少なかったので、長時間の滞在を楽しむことができた。下山後、槍ヶ岳山荘の簡易個室に宿をとった。布団が少々湿っていたが、疲れていたのでぐっすり寝られた。