2012年8月29日 水曜日

槍・穂高縦走登山 3日目

涸沢岳・奥穂高岳・前穂高岳

3,110 m  3,190 m  3,090 m

 4時に起床。満天の星空を眺めながら身支度を整え、日の出を待つ間にリュックも外に出しておいた。帯雲がかかって日の出は拝めなかったが、この日の燃えるような朝焼けも綺麗だった。涸沢岳までのルートは、大キレット以上という人もいるだけあって、さすがに険しかった。アスレチック気分で楽しめたが、ひとつ間違えば命取りとなる危険箇所がいくつもあった。穂高岳山荘までは晴れていたが、奥穂高岳山頂の手前からガスが出始め、そこから天候が一変した。前穂高岳を登り終えた後には雨も降り始め、上高地まで降ったり止んだりの天気が続いた。雨で濡れた下山ルートは難易度が増して、岳沢ヒッュテまでの急坂は気を抜けなかった。最後は足が棒のようになり、ゆっくり歩くのもしんどい状態だったが、何とか上高地まで下り切った。河童の休憩所で食べたジェラートが最高に美味しかった。

 シャトルバスの最終便に間に合わなかったので、帰りもタクシーで沢渡へ。疲れ切っていたので運転が心配だったが、大きな挑戦を成功裏に終えたことでテンションが上がり、睡魔に襲われることもなく、21時過ぎに帰宅した。結婚20周年記念登山を無事に終えて、得も言われぬ充実感と、感謝の気持ちで一杯になった。最高の山行になりました。

登山コースデータ
単純標高差 : 1,685 m
累積標高差 : +630 m / -2,225m
コース距離 : 10.2 km
標準コースタイム : 9 時間 40 分
歩行データ
総歩行時間 : 9 時間 35 分
総行動時間 : 11 時間 35 分

 コースタイム

北穂高小屋 5:25 ⇒ 5:45 展望スポット 5:55 ⇒ 涸沢のコル 6:50 ⇒ 8:00 涸沢岳 8:05 ⇒ 8:20 奥穂高山荘 8:35 ⇒ 9:15 奥穂高岳 9:45 ⇒ 11:10 紀美子平 11:35 ⇒ 12:05 前穂高岳 12:15 ⇒ 12:45 紀美子平 12:50 ⇒ 14:50 岳沢ヒュッテ 15:00 ⇒ (休憩5分) ⇒ 16:50 河童橋 16:55 ⇒ 上高地バスターミナル 17:00

4:00 起床 北穂高小屋

4時過ぎに外に出ると、満天の星空が広がっており、南東方向には町の明かりも見えていた。夜明け前のデッキで、この日の長丁場に備えてテーピングをした。

4時45分頃には、東の雲が真っ赤に染まって、地平線が燃えているように見えた。宿泊客の多くが日の出を待っていた。いったん朝食を食べに山荘へ入り、速攻で食べ終えてまたデッキに戻った。

厚い帯雲が広がっているようで、御来光は見ることができなかったが、朝焼けは十分綺麗だった。

出発前の身支度を整えながら、しばらく山頂の眺めを楽しんだ。

北北東の妙高連山。

複数の尖峰が連なる前穂高岳の向こうには、富士山と南アルプス。

八ヶ岳の左に小さく両神山のシルエットも見えた。

昨日はガスで見れなかった槍ヶ岳から続く稜線と大キレットの全貌。来てよかったと、深く感じ入る瞬間だった。

これから向かう涸沢岳、奥穂高岳、前穂高岳。出発の準備をしているうちに明るくなってきた。

5:25 北穂高岳を出発。

北穂高岳南峰の尖頭を左に巻いて進む。

南峰に登る人は少ないのか、南峰へ向かう目印は特に見当たらなかった。

北穂分岐の道標を過ぎて稜線に上がると、見晴のよい展望ポイントに出たので、しばらく眺めを楽しんだ。

北側には槍ヶ岳と北穂高岳・南峰。南峰の右奥には、北峰にいるハイカーが見える。

左に前穂高岳、真ん中に奥穂高岳、右に涸沢岳と並ぶ。奥穂高岳の右にはロバの耳とジャンダルムも見える。これから眼前の3,000m峰3座を越えて上高地まで下るのだと考えると、身の引き締まる思いがした。

前方に滝谷ドームの岩峰を望みながら急な岩場を下る。

ルートを見失わないようペンキ印を確認して進む。

滝谷ドームの手前はやせた岩稜がしばらく続く。

まだ歩き始めなので、より慎重に進む。

滝谷ドームの左、涸沢側を回り込んでいく。

滝谷ドームを巻いたところで一息できる場所がある。前方に涸沢岳と奥穂高岳が大きい。

再び滝谷側に入り、順番待ちをしてクサリ場を急下降する。

嫁は懸垂下降のように、クサリに全体重をかけるので、見ていて怖かった。

岩場を上り返し、大きな岩ゴロを越えて涸沢側へ。

大岩の涸沢側を回り込む。

すぐまた稜線の滝谷側に回り、トラバース気味に進む。

この辺りから奥壁バンドといわれる難所が続く。右側は滝谷がすっぱり切れ落ちている。

足場はある程度広いので3点支持を必要とする場所ではないが、すれ違いには注意を要する。

すごいところにルートがつけられているので、距離をとって全体を写した。

足場はしっかりしていたので、普通に通り抜けられた。再び稜線まで上り返し、涸沢側へ。

稜線の左側には前穂高岳と北尾根の全景。その下には涸沢カールと雪渓が見えた。

キク科のミネウスユキソウ。涸沢のコル付近で、さまざな高山植物を目にした。

ベンケイソウ科のイワゲンケイ。

キク科のミヤマオグルマ。

ゴマノハグサ科のヨツバシオガマ。

キキョウ科のイワシャジン。

ナデシコ科のイワツメグサ。

岩ゴロのコブをいくつか越えて進むと、巨大な壁となって涸沢槍と涸沢岳が眼前に広がる。

涸沢のコル(最低コル)まで下り、すぐ先の亀岩と呼ばれる脆い岩が積み重なった岩峰を上る。

亀岩を越えると正面に涸沢槍が大きい。

ニセ最低コルに出ると、いよいよ涸沢槍の上りが始まる。

下からよじ登るハイカーの姿が見えた。本当に一般ルートなのかと疑いたくなる光景だった。

背後には北穂高岳の南峰と北峰、そして槍ヶ岳が見えていた。

梯子を上り終えようとしている先行登山者の姿が下から見えた。

「日本一長いクサリ場」と言われるだけあって、最初からえらく長いクサリが設置されていた。

クサリ場の次は鉄梯子、そしてまたクサリ場と、難所が連続していた。

今回は嫁もカメラを携帯しており、難所を終えて私が登るのを待っている間に、度々写していた。

トラバース気味に進むクサリ場。

降りてきたおじさんハイカーとすれ違う。こういう時は絶対に急いではいけない。

クサリ場をジグザグに上って行く。

涸沢槍の穂先を滝谷側に巻いて進む。

まったく気は抜けないが、アスレチックのようで面白かった。

D沢のコルに出て、やっと涸沢岳への上りとなる。かなりの疲労度だったので、昨日北穂高山荘にとどまらずに穂高岳山荘へ向かっていたら、大変だっただろうと感じた。

手足をつかってひたすら上る。

3点支持の動きが考えなくてもできるようになっていた。

登っているうちに涸沢岳の上りも大キレットなみに大変だと思えてきた。

岩に打ち付けられたボルトを足場に、急峻な岩溝をよじ上っていく。

下をのぞくと北穂高岳から涸沢槍への稜線が一望できた。D沢のコルで休んでいるハイカーも見えた。

やっと涸沢岳の稜線に出ると、すぐ先に山頂標が見えた。

8:00 涸沢岳の山頂に到着。北穂高-涸沢岳間は、大キレットに匹敵するスリル満点のルートだった。

南側には奥穂高岳が大きい。左に前穂高岳で、右にはロバの耳とジャンダルム。少しガスが出始めているのが気になった。

北穂高岳(右)の向こうに見えるはずの南岳と大喰岳は完全に雲の中。槍ヶ岳の穂先だけが僅かに見えていた。

山頂の眺めを楽しんでから白出(しらだし)のコルに建つ穂高岳山荘へ下った。

山荘のすぐそばにはヘリポート。山荘の方が周囲のゴミを拾っていた。

8:20 穂高岳山荘に到着。槍ヶ岳の夕食で隣り合わせたカップルと、ここでも一緒になった。

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穂高岳山荘から涸沢カールと雪渓を見下ろす。左端の前穂高岳から屏風ノ頭まで北尾根がのびており、その奥には常念岳(左端)から蝶槍、蝶ヶ岳と続く稜線。一番奥には浅間山と八ヶ岳も見える。

8:35 しばらく休憩してから奥穂高岳へ。

上から見た穂高岳山荘。

最初から急登の連続。

鉄梯子を過ぎたら岩ガレの急登をジグザグに上って行く。

そのうちヘリコプターの音が近づいてきた。

長野県警のヘリコプター「やまびこ」。

いったん飛び去って、また戻ってきた。

縦走してきた峰々と県警のヘリコプター。

ヘリポートに近づくヘリコプター。

ヘリポートに着陸するのかと思って見ていると、プロペラを止めることなく、すぐに飛び去った。

5分ほどヘリコプターの動きを眺めていたのだが、このロスタイムが後で響くことになった。

あっさり着くかと思ったら、意外と奥行があってニセピークにだまされた。

3日間の疲れが蓄積されているので、ちょっとした上りもキツく感じる。

9:15 奥穂高岳の山頂に到着。タッチの差でガスに包まれてしまった。

山頂の祠と大ケルン。写真を誰かに頼んでからケルンに上るので、混雑期に渋滞するのも納得。

ケルンの隣には方位盤、下には穂高神社嶺宮があった。

空は明るいので30分ほど待ってみたが、ガスは切れなかった。9:45 前穂高岳へ向かう。

出発間際にガスの中からジャンダルムの影が見えた。いつかジャンダルムにも登ってみたい。

南東に延びる吊尾根もガスの中。

ガスが晴れないかなぁと思いながら歩いていた。

周囲の状況がほとんど分からないまま、ペンキ印に従ってクサリ場を下る。

左右は切れ落ちているように感じるが、ガスで下が見えないので高度感はない。

一瞬ガスが引いて、前穂高岳に連なる北尾根が見えた。

重い荷を背負った若者集団がいたので、付かず離れずついていった。様々な高山植物が山道脇に咲いていた。

バラ科のミヤマダイコンソウ。

タデ科のオンタデ。

ユキノシタ科のミヤマダイモンジソウ。

キンポウゲ科のカラマツソウ。

下るほどにガスが濃くなっている気がした。

滑りやすそうな一枚岩をトラバースして進む。

11:10 紀美子平に到着。

多くの登山者が休憩していた。

ここでひとまず昼食。北穂高小屋で用意してもらったおにぎり弁当を食べた。

一瞬ふわっとガスが切れて、これから下る重太郎新道と岳沢、その先の上高地まで見えた。

11:35 リュックをデポして前穂高岳へ。天気はいまひとつだが、登らないわけにはいかない。

前穂高も岩場の急登が連続していた。空身でもキツかった。

ペンキ印を確認しながら急坂を上る。

浮石が多いので落石には細心の注意を払った。

12:05 8座目の3,000m峰、前穂高岳に到着。周りは真っ白だったが、静かな喜びを感じた。

広い山頂は岩屑だらけ。10分ほどボーッとしてから下山を開始した。

急峻な坂を淡々と下る。

上ってくるハイカーは見当たらず、霧がだんだん霧雨になってきた。

12:45 紀美子平に戻る頃には本格的な雨になった。ザックカバーをつけてストームクルーザーを着こむ。

出発してすぐ長いクサリ場。岩が雨で濡れるとまるで条件が変わってくる。いつにも増して慎重に下る。

13:15 雷鳥広場を通過。

足元が滑るのでペースは上がらなかった。

13:35 岳沢パノラマを通過。

雨は降ったり止んだりで、当然展望はなし。

樹林帯に入っても、急な岩場が続く。

梯子を下る。急下降が延々と続いた。

14:05 「カモシカの立場」とペンキ表記された場所を通過。

岩場に上着のようなものが落ちていて、少し下ると落とし主が取りに上がっていった。

岳沢ヒュッテが見えてきた。

なかなか岳沢の河原が近づいてこない。この辺は本当につらかった。

やっと石ゴロの河原まで下った。テント場の横を通って岳沢ヒュッテへ向かう。

14:50 岳沢ヒュッテに到着。ジュースを買って一気飲みした。休んでいる間に、止んだ雨がまた降りだした。

岳沢を渡り返して右岸沿いに下る。なだらかに下って、やがて樹林帯に入る。

途中でカエル発見。

タデ科のイブキトラノオ。

山道は石段や丸太でよく整備されていた。樹林帯に入ると樹木が雨よけになった。

時折前方に見える上高地がなかなか近づいてこない。両膝に力が入らなくなってきたが、ひたすら歩くのみ。

途中、何度か顔を合わせた老夫婦が休んでいた。足が棒のようだと言いながら、表情は明るくほがらかで見るからに溌剌としていた。

16:35 やっと岳沢登山口に出た。ここからは梓川右岸の遊歩道を歩く。

梓川の清流と雲のかかった明神岳。

観光客の姿がちらほら目につき始め、まだかまだかと思いながら木道を歩く。

16:50 河童橋前のホテル白樺荘に到着。

河童の休憩所でジェラート食べて、生気を取り戻した。

河童橋で記念撮影。疲労困憊していたが、心地よい達成感と感謝の念に満たされた。

17:00 上高地バスターミナルに到着。結婚20周年記念にふさわしい、忘れられない山行になりました。