2012年11月4日 日曜日

八ヶ岳 縦走

赤岳 2899 m 2回目

 1時起床、1時25分出発。やまのこ村駐車場に4時25分到着。 予想していた冷え込みはそれほどでもなく、風もほとんどなかったので、陽の当たる稜線上に出てからはフリースもウインドブレーカーも必要なかった。まさに登山日和と呼ぶにふさわしい快晴で、見えない山がないと思えるほど遠望がきいた。あまりに眺めがよいので写真を撮るのに忙しく、各スポットで予想外に時間を食ってしまった。あわよくば阿弥陀岳にも登ろうとさえ考えていたのに時間はどんどん押してゆき、赤岳直下のルート間違いもあって下山時刻が大幅に遅れてしまった。前回は見れなかった稜線上からの壮大な眺めに、つい有頂天になっていた。結局日没後の暗い山道を歩くはめに陥り、計画の甘さと軽率な行動を反省することになった。

 美濃戸口からの悪路は細心の注意を払って運転したので、行き帰りとも車体をこすることはなかったが、タイヤが凹みにはまってスリップしてしまい、嫁に車を押してもらって脱出するというハプニングがあった。帰りの高速はいつものように大月インターから八王子JCまで30kmの渋滞地獄。横でうたた寝する嫁をしり目に、睡魔と闘いながらのつらい運転となった。下山が17時過ぎだったこともあり、帰宅は22時を回っていた。いろいろあって最後はくたくたに疲れ果てたが、以前は考えられなかった八ヶ岳の主脈縦走を日帰りで達成した上に、天候にも恵まれて、忘れがたい山行になった。

登山コースデータ
単純標高差 : 1,199 m
累積標高差 : 1,520 m
コース距離 : 15.9 km
標準コースタイム : 10 時間 5 分
歩行データ
総歩行時間 : 10 時間 15 分
総行動時間 : 12 時間 40 分

 コースタイム

やまのこ村P 4:40 ⇒ 4:50 美濃戸山荘 4:55 ⇒ 林道終点 5:55 ⇒ 7:05 赤岳鉱泉 7:20 ⇒ 8:45 赤岩の頭 8:50 ⇒ 9:20 硫黄岳 9:55 ⇒ 硫黄岳山荘 10:25 ⇒ 11:20 横岳(奥ノ院) 11:35 ⇒ 11:50 三叉峰 12:00 ⇒ 12:55 赤岳天望荘 13:05 ⇒ 13:35 赤岳山頂 14:10 ⇒(ルート誤り20分ロス)⇒ 文三郎尾根分岐 14:50 ⇒ 15:35 行者小屋 15:50 ⇒ やまのこ村P 17:20

4:25 やまのこ村 駐車場

4:40 身支度を整えて真っ暗な林道を出発。駐車場の半分近くが車でうまっていた。

途中で美濃戸山荘のトイレを借りた。使用料100円。

今回は前回とは逆まわりとなる北沢ルートから入ることにした。理由は以下の3点。  

最初に林道歩きが1時間ほどあるので、暗闇でも道迷いの危険がない。 

北から南に稜線を歩くことになるので、凍結していると思われる北側斜面を上りにつかえる。 

赤岳への到着時間によって、阿弥陀岳に登るか否かを決められる。というわけで、北沢ルートへ。

真っ暗闇の林道を黙々と歩いた。5:55 林道終点まで来ると、ちょうどヘッドライトがいらない明るさになった。

柳川北沢沿いの山道はよく整備されていた。右岸と左岸を何度か行き来しながら進む。

登山道がアイスバーンになっている箇所もあり、朝晩の厳しい冷え込みを思わせた。

前方に大同心と横岳が見えてきた。

7:05 赤岳鉱泉に到着。外のテーブルで食事中のグループや、小屋の前でタバコを吸っている人などがいた。

大きな構築物は、冬になるとアイスクライミングを楽しめる「アイスキャンディー」。

小屋のすぐ近くがテン場になっていたが、傾斜地ばかりのように見えた。

休憩しながらアンパンなどを食べていると、次々に人が出てきて出発の準備を始めた。

7:20 集団の前後になるのは嫌なので、早々に出発。最初は緩い傾斜が続いた。

早朝から空は明るくて、これは快晴間違いなしとわくわくしながら上った。

鳳凰三山から3週間空いたが、体調は上々。よいペースで上れた。

樹林帯をジグザグに上っていくと、やがて森林限界を超えて硫黄岳の山頂が見えてきた。

南側には赤岳、中岳、阿弥陀岳が並ぶ。

8:45 赤岩の頭に出た。北東側の前方には硫黄岳の山頂部。横岳との鞍部に続くなだらかな稜線上に、大きなケルンがほぼ等間隔に並んでいるのが分かる。

オーレン小屋への分岐を過ぎて、最後の上りにかかる。

周囲はどちらを向いても素晴らしい眺め。写真を撮りなからゆっくり上った。

右手には赤岳、中岳、阿弥陀岳がそびえ立つ。大展望にテンションが上がった。

風もほとんどなく、最高の登山日和。

最後は岩稜帯の南側を巻いて山頂へ。

9:20 広々とした硫黄岳山頂に到着。

北アルプスから妙高、日光連山その他、抜群の展望が広がっていた。

ロボット雨量計跡の近くでひと休み。広島弁の方が意気投合していて、方言での会話が耳に心地よかった。

北北西には北八ヶ岳。天狗岳の奥に北横岳と蓼科山、右奥には妙高連山、左には美ヶ原を挟んで北アルプスが並ぶ。

東天狗岳の上に見えた妙高連山。左から雨飾山、高妻山、焼山、火打山、妙高山。

北方面。左から根子岳、四阿山、籠ノ登山、横手山、本白根山、黒斑山、浅間山。

北東方面。中央には荒船山、その上に重なっているのが妙義山(相馬岳)、左に裏妙義、その上には榛名山。中央奥には日光白根山、太郎山、男体山と並ぶ。

360度あちらこちらの写真を撮っているうちに、時間が過ぎてしまった。

次は爆裂火口に移動。火口の側には雪が積もっていた。

9:55 移動開始。

目印となる大きなケルンの脇を通って鞍部へ向かう。

空にはパラグライダーがかなりの高度で飛んでいた。

ルートの先には横岳、赤岳、中岳、阿弥陀岳と南八ヶ岳がずらりと並ぶ。中岳の隣には権現岳の頭も見えていた。

少し進むごとに足を止めて写真を撮ったり眺めを楽しんだりするので、全然ペースが上がらない。

東側には奥多摩・奥秩父の山々。甲武信ヶ岳や金峰山はもちろん、両神山や武甲山も見えていた。

横岳と硫黄岳の鞍部は大ダルミと呼ばれる風の通り道だが、この日はほとんど無風で快適に歩くことができた。

10:25 硫黄岳山荘到着。前方は台座ノ頭。

風を避けるように建てられた硫黄岳山荘。

台座ノ頭まではゆるやかな岩と砂礫の上りが続く。背後はなだらかな曲線を描いて広がる硫黄岳。

アイゼンが必要なほどではないが、積雪は一部凍結しているので慎重に進む。

最近は嫁もカメラを携帯しており、「私の写真も採用しろ」と時々クレームが入る。

硫黄岳小屋に宿泊のハイカーだろうか。手ぶらのグループを何組か見かけた。

11:00 台座ノ頭(2,795m)に到着。岩の上から写真を撮ろうとしたら、岩陰で花を摘む女性がいてビックリ。

台座ノ頭までくると、いままで影に隠れていた富士山が正面にどっかと現れた。山裾までクリアに見えて、また嬉しくなった。

横岳のピークが奥ノ院、大権現、三叉峰(さんじゃほう)と真ん中に連なる。その左奥には富士山、右には南アルプスが広がる。台座ノ頭からの稜線歩きは、素晴らしい眺めの連続だった。

横岳(奥ノ院)へ向かう。ここからは横岳の核心部となるクサリ場が続く。

カニの横ばいを通過する。クサリを伝うのではなく、一段下へ降りてしまえば楽に通過できる。

通過後に後ろを振り返る。岩の尖峰をまく危険な箇所に見えるが、慎重に進めば問題ない。

西側から岩を登って東側へ回り、鉄網の渡し板を進むと山頂は間近。

山頂手前の危険なヤセ尾根は、鉄杭とクサリで安全確保がなされていた。

11:20 横岳(奥ノ院)に到着。ここもまた360度の素晴らしい眺めが広がっていた。

とにかく眺めがすばらしいので、阿弥陀岳はカットして、のんびり展望を楽しみながら進むことにした。

西南西には中央アルプス。左に南駒ヶ岳と空木岳、真ん中あたりに東川岳、熊沢岳、桧尾岳と並び、右に宝剣岳と木曾駒ヶ岳、さらに麦草岳、茶臼山と続く。

ほぼ真西には御嶽山。左手前は経ヶ岳、右手前は守屋山。

西北西には乗鞍岳。左奥には白山も見える。手前に見える湖は諏訪湖。

北西には北アルプスがずらりと並ぶ。左から霧沢岳、穂高連峰、大キレット、南岳、中岳、大喰岳、槍ヶ岳と続き、冠雪がなくて黒く見える常念岳、鷲羽岳、大天井岳と続く。大天井岳の手前は鉢伏山(はちぶせやま)。

ほぼ中央に立山と剱岳。その左は餓鬼岳と龍王岳、右は岩小屋沢岳と爺ヶ岳。岩小屋沢岳の手前は美ヶ原。左手前には霧ヶ峰(車山)も見える。

さらに北アルプス。左から爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五龍岳、唐松岳、白馬三山と続く。右に大きいのは蓼科山。

東には奥多摩の山々。左に三宝山と甲武信ヶ岳、真ん中あたりに小川山、右に国師ヶ岳、北奥千丈岳、朝日岳、金峰山と続く山塊。朝日岳の手前には瑞牆山も見える。

にぎやかだった山頂からどんどんハイカーがいなくなったので、残っていた方に写真をお願いした。

11:35 横岳を出発。

富士山の横、三叉峰の上に人が立っていた。

広めの稜線を歩いてなだらかなピークに出た。このあたりが大権現かと思ったが、石碑は見当たらず、確信のもてないまま通過した。

次のピーク、三叉峰へ向かう。

北側の斜面はわずかに積雪しているが問題なし。

ルートは峰の東側をまいているが、せっかくなのでピークに上がった。

11:50 三叉峰に到着。ケルンのある三叉峰(2,825m)からの眺めもまた素晴らしかった。

右に大きく赤岳、左奥には富士山。ほれぼれするような眺めが360度に広がっていた。三叉峰から眺めた赤岳への稜線は、比較的平坦に見えたが、小ピークが連続していた。

背後の北側を振り返ると、越えてきた大権現と奥ノ院が重なり、その右奥に硫黄岳のなだらかな山頂部と妙高連山が見えた。左には蓼科山、その手前には大同心。一番奥には北アルプスがずらりと並ぶ。

12:00 三叉峰を下りて石尊峰へ向かう。

10分ほどで石尊峰(せきそんほう)らしきところを通過。

西側につけられた巻き道を進む。

いったん稜線に上がり、次は稜線の東側を下る。

奥ノ院から続く小ピークの連続は歩き応えがあった。

稜線からの絶景にすっかり忘れていた疲れだが、時間とともに徐々に疲労を感じ始め、思ったより時間がかかるという印象も増してきた。

日ノ岳の東側にあたるルンゼ状のクサリ場を急下降する。

右へ南側斜面を進み、再び稜線上に出た。

稜線を進むと次は二十三夜峰。やっと赤岳天望荘が近くに見えてきた。

岩峰の右下につけられた梯子を下る。

次に現れた数メートルの尖峰が二十三夜峰と思われる。

12:50 地蔵尾根との分岐にあたる地蔵仏に到着。このあたりから下山時間が気になり始めた。

やっと赤岳天望荘が近づいてきた。

12:55 赤岳天望荘に到着。トイレを借りて10分休憩。

13時を回ってハイカーの姿はほとんどなくなった。赤岳へ向かう男性ハイカーに「これからどうするんですか」と尋ねられ、「行者小屋から美濃戸へ下ります」 「ぎりぎりですね」 「ぎりぎりです」というやりとりを交わした。

13:05 赤岳山頂へ向かう。

砂礫の斜面は雪で一部が凍結していた。傾斜が増すほどに足元が危うくなってきた。

途中からクサリにつかまらないと上れない状態になったが、アイゼンを付ける時間が惜しくてそのまま進んだ。

足元が悪くて嫁のペースが上がらないので、先に登って写真を撮ることにした。見上げた先には赤岳山頂小屋。

西には阿弥陀岳。山頂にハイカーの姿が見えた。

山頂直下から歩いてきた稜線が一望できた。横岳の奥ノ院、大権現、三叉峰と連なるピークの位置もよく分かる。左下には赤岳鉱泉と行者小屋もよく見えた。

岩峰の上に嫁の姿を確認できた。アイゼンなしで大丈夫かと心配していたが、あそこまで上るともう凍結箇所はほとんどない。腰に手を当ててかなりバテているように見えた。

13:35 赤岳山頂小屋に到着。ハイカーの姿はなし。

男性ハイカーに続いて、13:45 嫁も無事に到着。

午後になっても天気は快晴。ガスが出る気配すらなく、赤岳山頂も360度の絶景が広がっていた。

山頂小屋のある北峰から三角点と社のある南峰へ移動。下で話をした男性ハイカーが休んでいた。

赤嶽神社の祠。茅野市街を向いて建てられているので反対側に回る必要がある。

赤嶽神社(右)の左隣には太成宮の祠が並んでいる。

一等三角点の隣には何故か小さな狛犬が2体。

赤岳まで登ると八ヶ岳の南側が一望できる。左から三ツ頭、権現岳、ギボシ、編笠山、西岳と続く堂々たる山塊。その後ろには、鳳凰三山、白峰三山、アサヨ峰、甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳など、南アルプスの峰々がずらり。

西には阿弥陀岳。当初は阿弥陀岳にも行くつもりだったが、急いで歩いても時間的に厳しかっただろう。そのうち男性ハイカーがキレット方面へ向かったので、山頂を我が家だけで独占することになった。

南南東には富士山。その右には毛無山、左手前には茅ヶ岳。左端には幽かに丹沢山も見える。

東には奥秩父の山々。左から赤久縄山、御荷鉾山、御座山、真ん中に両神山、右には小さく武甲山も見える。

時間が押しているのに、あまりの気持ちよさについついのんびりしてしまった。

14:10 山頂標で写真を撮って下山開始。

赤嶽神社から阿弥陀岳の方角へ稜線が延びていて、てっきりこれがルートと思い、何の疑問も抱かずに進んでしまった。しばらく下って行くと何だか道が険しくなってきた。ルートが分からないし、行けそうなところを無理に下るとさらに険しさが増して、その先の積雪には踏み跡がない。やってしまったかと内心では思いつつも、いまさら上り返したくはないので必死で下山ルートを探す。ふと中岳との鞍部をのぞくと、キレット方面に向かったと思っていた男性ハイカーの姿が下に見えた。それでルートが完全に間違っていると気がついた。何ならアイゼンをしてさらに下ろうと思っていたほどで、危うく引き返せない場所まで進んでしまうところだった。

先に戻ってルートを確認していると、嫁がへとへとになって上り返してきた。いやはや申し訳ないことになった。

キレット方面へほんの少し降りたところに、きちんとルートを指示する表示があった。何故これに気づかなかったか…。

20分ほど時間をロスしてしまい、いよいよもって待ったなしの状況になってしまった。

気を取り直して先を急ごうとするが、気が抜けないクサリ場が続く。

ルート上に雄大な眺めが広がり、ついまた見入ってしまう。この時は、最悪日没後の下山になってもヘッドライトがあるから大丈夫だろうと、少々甘い考えでいた。

素晴らしい眺めを堪能したという満足感が、山で当然感じるべき危機意識を鈍らせていたように思う。

振り返ると赤岳の険しい岩壁がそびえていた。間違えてどこを下ろうとしていたのか分からないが、そのまま進んでいたら本当に危なかったと実感した。

目を凝らすと、赤岳の岩壁にとりつくロッククライマーが3人見えた。彼らも時間的にかなり押していたのではなかろうか。

14:50 分岐から文三郎尾根へ入る。

文三郎尾根に入ると、木や金網の急な階段が続く。最短距離で下れるが段差が大きくて膝にきた。

日陰になりやすい下の方は、積雪して一部凍結していたので、ペースが上げらない。

階段が終わっても凍結した歩きづらい道が続いた。

15:30 中岳との分岐を通過。

15:35 行者小屋に到着。下山の準備をしていた男性は、我々が美濃戸に下ることを確認して先に出発した。

お腹が減り過ぎて気持ち悪くなっていたが、おにぎりを食べて少し落ち着いた。

15:50 行者小屋を出発。美濃戸山荘まで日没時間との競争になった。ガンガン飛ばす嫁に必死でついて行くうちに体調の悪さを忘れていた。

明るいうちにできるだけ下まで降りたかったので、ひたすら速く歩くことに集中した。途中で先行する男性ハイカーの姿を前方に捉えたが、大きな荷物を背負っているのにとても速く、間が詰まらなかった。

気が張っていたからか、速いペースで休みなく歩いても、あまり疲労を感じなかった。

何か建物が見えてきて、暗くなる前に着いたと思ったら堰堤だった。これにはがっくりきた。

空は夕陽に染まり、いよいよ暗くなってきた。

17時過ぎにヘッドライト装着。暗い中でルートを探すのは非常に難しく、確信がもてないまま前進した。時折見つかるテープが頼りだったが、何度か道を外していたと思われる。

先行していた男性はヘッドライトがないらしく、明かりなしの暗がりを進んでいた。それじゃ必死に急ぐわけだよ。

17:15 美濃戸山荘に到着したときは心からホッとした。ヘッドライトがあっても暗闇だと簡単にルートを見失う。改めて甘い判断だったと反省。

17:20 やまのこ村の駐車場に到着。車は我々の他に1台のみ。誰もいないので駐車料金は払わずじまい。

日没に間に合わなかったが、無事に下山できてよかった。素晴らしい1日となったが、学ぶことの多い山行となった。