ついに自室の机を作るところまで辿り着いた。自分好みの大きな机を作ることは、壁一面の本棚とともに引っ越し前からの切実な願望であった。
本を読むことに集中して、文脈をとらえて作者と対話するかのように考える。これは長年の習慣で、普段の生活で人と話す機会が少なくてもそれほど苦にならないのは、読書という趣味を持っているからだと思っている。
自分が今よりずっと年を取って、大変なことがうんと増えて、たとえ孤独な環境に置かれたとしても、壁一面に並ぶ本の背表紙を眺めて1冊の本を手に取れば、いつだって旧友に会ったかのように心の対話が楽しめるだろう。
本を読むのに疲れたら、大きな机の上で勝手気ままに絵を描いてもよいだろうし、想像の世界に浸りながら模型作りを楽しんでもよいだろう。
自分だけの豊かな時間を過ごすための部屋があって、そこに大きな机と本棚があれば、それに越したことはない。そうした思いは「書斎」と言われる空間への甘美な憧れにつながっていて、随分昔から「書斎」と呼べるような自分だけの部屋を持ちたいと考えていた。
そんなわけで、どんな机を作るか考えを巡らすのは楽しいことであり、実際の作業もいつも以上に楽しめた。
基本設計と材の購入
引出しラックとパソコンラックを左右に置いて、その上に大きな天板を載せるという構造はすぐに決まったが、天板のサイズをどうするか、プリンターの収納を含めたパソコンラックの仕切りをどうするかなど、詳細がなかなか決まらなかった。
厚紙で簡単な模型を作ってイメージを膨らませて、やっと最終的な形を決めたが、模型を作ることは作業手順を考える上でも役に立った。


各パートの大きさは、手持ちの端材を念頭に置きながら、なるべく新たに購入する材が少なくて済むように、あれこれ考えながら決めていった。

今回購入した材
ラジアタパイン集成材 25×910×1820
9,800円
ラジアタパイン集成材 19×910×1820
7,480円
パイン集成材 15×450×1820
4280円
キャスター 420G-UR25
@128×4 512円
引き出しスライドレール 400mm 3段引
@1699×2 3,398円
合計 25,470円
天板は25mm厚のラジアタパイン集成材を使い、長さ1820mm、幅660mmとした。
引出しラックとパソコンラックは19mmの集成材を使い、高さは690mmでそろえて、奥行はどちらも450mm、幅はそれぞれ内径400mmと420mmにした。
引出しは3段として、下段は19mm厚の集成材ですべて作成し、上段と中段は化粧板のみ19mmの集成材を使い、側板や底板など残りの部分は15mm厚の集成材で作ることにした。
部材を切り出して研磨する



パソコンラックの組立て&塗装







いつものようにオスモカラーでの塗装も考えたが、今回は、古材のようなヴィンテージ感を出してくれるBRIWAX (ブライワックス) のジャコビアンを選択した。
色移りなどの問題もあるようだが、塗装後の後始末が簡単だし、何より色がよい。タワシでゴシゴシ磨き上げると、何とも言えない渋い光沢が出てくるのだ。
机は今後何十年も使うつもりなので定期的な手入れは欠かせないが、手をかけることでますます愛着が沸いてくるだろう。
配線コードもパソコンラックの中に収めるつもりなので、10個口の細長い電源タップを購入して、棚板の奥に取り付けておいた。
プリンター台を作成する
パソコンラックの下部にはプリンターを収納するので、そのためのキャスター付きのプリンター台を作成する。
プリンターを載せる大きさには足りないものの、25mm厚の集成材で少し大きめの板が残っていたので、端材を足してプリンター台を作ることにした。









引出しラック (枠) の組立て&塗装





上段と中段については、少し贅沢をして、動きのスムーズなベアリング式のスライドレールを新たに購入した。
下段については、娘宅用の食器棚を作った時に購入して使わなかったローラー式のものが残っていたので、それを付けることにした。机を移動することがあった場合、重いものを入れがちな下段の引出しは、取り外しができた方がよいのでちょうどよかった。



3段の引出しを作成する
下段の引出しを作る













上段と中段の引出しを作る












天板を加工する





反り止めなども付けようかと考えたが、集成材はあまり反らないようなので、とりあえずは付けないことにした。天板が反るようなことがあれば、そのときに対策を講じようと思う。

①ミニ脚立に端材を重ねて、ラックよりも高い位置に天板の支えを作る。②ダボマーカーをダボ穴に入れたラックを天板の下に滑り込ませて、ラックを天板裏のガイド位置に合わせる。③ミニ脚立の上の端材をどけて、天板裏にダボマーカーで印をつける。
以上の作業を両サイドで行ってから、天板の裏にタボ穴を開けた。






大きな机なので、天板はボンドで固定せずにタボだけで固定し、いつでも解体できるようにした。
机を自室に設置する
机周りの壁を刷新して、正面に2段の棚とサイドに有孔ボードを設置してから机を設置した。


出来上がった机を見た妻は、「すごく仕事のできる人の机みたい」と言っていたが、それは少し違う。
大きな机を有する私にとっての「書斎」とは、仕事をする場所や何か立派なモノを生み出すための機能的な場所ではなく、もっと個人的で、自堕落な空間と言えなくもない場所なのだ。
自由気ままなに遊べる、ごく小さな自足した世界を目指したもので、しいて言えば、子供の頃に憧れた秘密基地のようなものに過ぎない。だが、そこに安らぎのロマンがあるのだ。少なくとも私はそう信じている。