トレッキング中に見た花々
余談 シカの食害と高山植物について
さすが花の百名山だけあって、今回はたくさんの高山植物を見ることができた。特に八島ヶ原湿原は、さまざまな花のオンパレードで、名前を掲示してある花も多く、きちんと管理されている印象を受けた。
一方で、八島ヶ原湿原の周囲にめぐらされたシカよけネットを出たとたんに、花はほとんど見られなくなり、シカの食害がいかに酷いか、考えさせられることにもなった。
ひと昔前の登山エッセイに、雲取山の石尾根もお花畑がたくさんあったと書かれていたが、何度も足を運んだ石尾根でお花畑を見たことはない。シカが入れないような厳しい山岳地帯ならともかく、シカが入れるような場所は、人の手で守らないと高山植物は簡単に消えてしまう。後の世代は、そこに花畑があったことも知らず、誰もが享受できたはずの豊かさが、すっかり失われてしまったことも知らない。
自然の中で人間が享受できる豊かさは、それこそお金に替えられないほど大きなものだと感じるが、誰の所有でもなく、値段をつけられないものだからこそ、それを守るのは難しい。(現在、さまざまな問題を孕みながら東京五輪が開催中だが、スポーツの価値ということも、これに近い部分があるように思う)
国立公園の指定をして、法的に守るだけではシカの食害はなくならない。観光資源として守っている地域もあるのだろうが、人任せではなく、自然の豊かさを感じてそれを享受している人たちが、実際にアクションを起こしていくべきだろうと感じる。自然愛好家の富豪か、どこかの儲かっているアウトドア関連企業が、問題に対処してくれないかと夢想するのだが、それでは総体として何も変わらないのだろう。
いますぐに何かできるわけでもないが、考えずにはいられない問題であり、何かできないかという思いが常に頭のどこかにある。草花や樹々、あるいは生き物のことをブログに書くことも、自然の価値を広めている活動と言えなくもないが、もう少し腹をくくった活動ができないかと思う今日この頃である。
※ 霧ヶ峰登山の詳細はこちら → https://mt.ubo-do.com/mt-report/kirigamine2.html